今年2月末で、月末金曜日の早帰りを推奨する「プレミアムフライデー」を官民共同で推進して1年が経過した。果たしてどれほど普及しているのか。検索動向や各種アンケート調査の結果を総合すると、導入1年目の浸透具合は大変厳しいものであることが見えてきた。

図1 「プレミアムフライデー」検索ボリュームの推移(Googleトレンド)
図1 「プレミアムフライデー」検索ボリュームの推移(Googleトレンド)

 まず検索動向について。指定した検索語の検索ボリュームの推移を、ピーク時を100として把握できる「Googleトレンド」を用いて「プレミアムフライデー」を調べてみた(図1)。ピーク(100)は第1回の昨年2月。だが翌3月は17と激減していた。以降、4月は12、5月は11とジリ貧で、昨年12月と今年1月は3にまで落ち込んだ。先月(2月)は5とやや盛り返しているが、導入1周年であることを考えると寂しい数字である。

 敗因の一つは第2回の昨年3月。月末金曜日の3月31日は多くの企業で決算月の最終日に当たり、“プレ金”を楽しむような日ではなかった。第1回は、「早く帰れないよ」といった愚痴も含めて盛り上がりはあったが、第2回にして話題性を失ってしまった。この反省に立って、やはり最終金曜日が3月30日で決算月最終日となる今年3月は、プレ金の1週前倒しが提案されている。

図2 認知率
図2 認知率

 では認知率はどうか。インテージはプレ金第1回の昨年2月と、1周年を迎えた今年2月に調査をしている。同一回答者の追跡調査ではないが、参考値として比較できる。プレ金について「内容まで知っている」と回答した人は、昨年2月は28.2%だったのに対し、今年2月は62.8%と大幅に増えている(図2)。内容の理解は明らかに進んだ。

図3 勤務先の奨励・実施状況
図3 勤務先の奨励・実施状況

 だが残念ながら「実行」が伴わない。金曜日出勤かつ1日7時間以上の勤務者を対象に、勤務先のプレミアムフライデー奨励・実施状況を尋ねたところ(図3)、今年2月調査で「奨励・実施している」は11.0%。昨年2月調査では、「奨励された」または「実施された」が計10.5%だった。当時からほとんど伸びていない。制度の認知と実際の職場での取り組みの間には大きな隔たりがある。

推進派企業に勤めていても早帰りできない人がいる

図4 当日の早帰り状況
図4 当日の早帰り状況

 では、プレ金の日に実際に早く帰っている人はどれほどいるのか(図4)。昨年2月の第1回に「早く帰った」人は3.7%。それから1年を経て「1回以上早帰りをした」ことがある人は8.3%と、まだ10%を切る水準だ。職場が推奨・実施している人が11%いても、早帰り経験者は8.3%にとどまっていることから、推進派企業に勤務していてもこの1年、1回も早く帰れていない人がいることが分かる。

図5 勤務先で「働き方改革」が始まったか?
図5 勤務先で「働き方改革」が始まったか?
図6 業務効率は上がったか?
図6 業務効率は上がったか?

 掛け声ばかりの働き方改革に疑義を唱える広告を昨年出稿して話題を集めたサイボウズも、興味深いアンケート調査を実施している。20~50代の中間管理職500人を対象に実施したアンケートがそれだ。勤務先でノー残業デーや残業時間制限など働き方改革が「始まった」と回答した人は42%(図5)。うち70%が、「働き方改革で会社・部署の業務効率が上がったか?」との問いに「いいえ」と回答している(図6)。また、「プレミアムフライデーやノー残業デーに早く帰るために、他の日に残業をしたことがある」という回答が36%もあった(図7)。

図7 早く帰るために他の日に残業した経験
図7 早く帰るために他の日に残業した経験

 プレ金導入1年目は失敗に終わったと言わざるを得ないだろう。早く帰って残りの仕事を週末や週明けに回す自由(裁量)が現場のビジネスパーソンになければ、たとえ推進を掲げる企業でも、プレ金の実現は難しそうだ。



■調査概要
・図2~4 調査名:「プレミアムフライデーに関する調査」、調査期間:2018年2月14~16日、調査対象:一都三県(東京、神奈川、千葉、埼玉)に住む20~59歳の男女有職者3251人、調査主体:インテージ
・図5~7 調査名:「『働き方改革』に関する意識・実態調査」、調査期間:2018年1月30~31日、調査対象:20~50代の中間管理職男女500人、調査主体:サイボウズ

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