ファミリーマートが、店頭で販売するコーヒー1杯につき1個スタンプを付与するスタンプカードを電子化したり、店舗入り口上部にある横断幕に代わってデジタルサイネージ(電子看板)を導入したり、店舗のペーパーレス化を進めている。

 今年2月9日から、四国地方のファミリーマート約370店において、電子スタンプカードサービス「FAMIMA CAFEを飲んで電子スタンプを貯めよう」キャンペーンを展開中だ。来店客は、あらかじめスマートフォンに専用アプリ「ファミリーマートスタンプカードアプリ」をダウンロードの上、FAMIMA CAFEのコーヒー、ラテ、フラッペなどを購入する際にレジでアプリ画面を提示する。店員は1杯購入につき、実際のスタンプの形状をした電子スタンプをスマホ画面上に押す。するとスマホ画面上のスタンプが1つ増え、10個スタンプが貯まるとクーポンIDとQRコードが表示される。店内端末「Famiポート」でIDを入力するかQRコードを読み取らせると、「ブレンドS」または「アイスコーヒーS」の引換券が発行される仕組みだ。

スマートフォン画面に直接「ポン!」
スマートフォン画面に直接「ポン!」

 ファミリーマートが採用しているポイントシステム「Tポイント」を使った場合でも、キャンペーン期間中に10杯購入した客のレシートに引き換えクーポンを印字することは不可能ではない。ただし、ポイントがだんだん貯まっていくワクワク感や、「あと2回で10杯になるから今飲もう」といったモチベーションは高まりづらい。従来の紙のスタンプカードを使った場合は、所持し忘れたり、全国の店舗で展開するには準備の負担が大きかったりといった課題がある。

 電子スタンプも専用アプリの存在を知ってもらう必要はあるが、店内にポスターを掲示したり、コーヒーの購入者にチラシを配ったりして告知に努めたことで、ダウンロード数は事前の想定を上回り、開始2週間時点で早々に引換券を多数発行しているという。

四国のファミリーマート限定で実施中の電子スタンプカードアプリ
四国のファミリーマート限定で実施中の電子スタンプカードアプリ

 電子スタンプのシステムは、NECネッツエスアイの「PlusZone/Stamp」を採用した。店員がスタンプの柄の部分を持った際に発生する静電気がタッチパネルに反応して押印される仕組み。アプリのインストール時に登録した性別や年代などの属性情報を押印時に収集するため、購入状況とクロスしてデータを分析することもできる。店舗のエリアによって主要購入層や購入時間帯などの特徴、違いが見えてくれば、効果的なプロモーション計画を立てやすい。

 店頭販売のコーヒーは比較的リピート購入の多い商品で、“ついで買い”も期待できる。スタンプ施策でリピート率を高めることで、客単価を上げたい考えだ。四国限定で7月末日まで実施し、効果検証を経て年内にも全国展開を目指す。

店舗増を見据えデジタルで省力化と集客強化

 ペーパーレス化はスタンプカードだけにとどまらない。同社が本社を構える東京・池袋のサンシャイン60の近くにあるサンシャイン南店は、入り口ドア上部にある横断幕をデジタルサイネージに切り替えた。動画が流れるため訴求力が高く、特に夜間は従来の横断幕よりも一際目立つ。

 これまでキャンペーンのたびに、横断幕を張り替えてきたが、期間中はその一種類しか掲示できないのはもちろん、店舗別の臨機応変な対応が難しく、全店舗を一斉にキャンペーン開始に合わせて切り替える負担も大きかった。デジタルサイネージならば、初期の導入コストはかかるものの、訴求力の高い動画で店舗前を通行する人を店内に誘引できるほか、切り替えコストが下がり、またエリアの顧客属性や売れ筋に合わせて配信する動画を変えることも可能になる。

 同社の国内店舗数は1万1555店(1月末時点)。今年9月にファミリーマートとユニーグループが合併し、ユニーグループ傘下のサークルKサンクスをファミリーマートに集約すると、店舗数は1.5倍超増えて一気に1万8000店規模になる。オペレーションの省力化と集客強化の両面で、ペーパーレス化、デジタル化が貢献しそうだ。

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