2月27日に開催された本誌読者無料セミナーの2番手に登壇したのは、ローソンデジタルプラットフォーム部マネージャー白井明子氏。「フルファネルで活用、ローソンのLINE戦略」と題してローソンのLINE活用戦略について話した。

ローソンは2012年にLINEの公式アカウントを開設し、現在約2024万人の友だちを抱えている。当初はメッセージ機能でキャンペーン告知を行うなどに終始していたが、現在ではLINEの活用範囲を大幅に拡大している。
そもそもローソンには、自社のスマートフォン用アプリがある。しかし、ダウンロード数は約400万にとどまり、そのうち実際に稼働しているのは約100万人ほどだという。
白井氏は冒頭、「自社のアプリユーザーはLINEの友だち数に比べればかなり少なく、新たな施策を導入する際に自社アプリだけですべてを賄うのはコスト負担が大きく、リスクも高い。従って、新たな企画を考えるときには、LINEプラットフォームを使うとどうなるのかということをまず考える」と話した。そしてこう続ける。「もちろん、LINEだけがあれば課題が解決できるというものではない。うまくいく施策には、広報の宣伝PR活動や広告のマスの仕掛け、私達が担当するデジタルの仕掛けなどに加え、実際に店頭に商品がしっかり並んだり、パブリシティ記事がちゃんと載ったりといった成功のパターンがある。ただ、LINEはこうした一連の施策に取り組むための最大のプラットフォームであり、今後より一層の活用を進めていく」。
LINE Payの店頭「コード決済」を全店に導入
直近では、LINE Payの店頭「コード決済」の全店導入や、マイクロソフトの人工知能(AI)「りんな」の技術を活用したチャットbotに力を入れている。後者はそのAI技術を基にローソンクルーのあきこちゃんという公式キャラクターを設定し、ユーザーがLINEアカウント上で会話を楽しめるものだ。
ローソンはコーポレートスローガンとして「マチの健康ステーション」を掲げるだけに、「カロリーが気になるひと」「糖質が気になるひと」といったサービスメニューを用意しており、ユーザーがLINEアカウント上でそれらを選択するとお薦めの商品画像とともにカロリー値が送られてくる。これらは「LINEビジネスコネクト」を利用して実現したものだ。
また、LINE上で毎週火曜日に更新される新製品紹介も人気コンテンツだ。加えてAIならではの機能の1つである「しりとり」では、あきこちゃんは必ずローソンの商品名で返答するといった工夫がされており、その擬人化されたキャラクターに熱狂的なファンも存在するという。
これらの仕組みについて白井氏はこう話す。「そもそもあきこちゃんというキャラクターは2010年に誕生し、これまでにTwitterやFacebookにも登場してきた。それが昨年、マイクロソフトが提供する対話型AI「りんな」ちゃんのAPIに基づき、当社のLINE公式アカウント上で対話できるように開発を進めた結果、一躍人気者になった。現在も2〜3週間に1度は新しい機能を加えるようにしている。これは自社内に独自開発ができるITエンジニアチームがあることが大きい。りんなちゃんでの知見をもとにスピード感を持って開発を進めている」。
直近ではこれらAI化の機能を生かし、キリンビバレッジとタイアップしてサプリ飲料30万本のサンプリングキャンペーンを実施した。これはLINEアカウント上で午前11時にプッシュ通知が届き、その場で抽選の上で無料クーポンを配布。当たったユーザーが店頭にクーポンを持参し、商品と引き換えられるというものだ。
「AIの機能を使って抽選のスキームを工夫することで、単に性や年代別ではなく、例えば塩味好き、甘いもの好きの人向けに、というようにターゲティングできるところが面白い。このキャンペーンでも高い引き換え率が得られた」と白井氏は話す。
さらにアカウント上の会話の中でユーザー診断を行い、嗜好によってブランパン派、ナチュラルローソン派など5つに分類。食事の提案を行う機能も話題となっている。
最後に白井氏は、「今後はIDコネクトを含めて、例えばコンビニ受け取りの商品の到着をメールではなくLINEで配信するサービスを検討している。また『ユニクロ』のビーコン活用例なども参考にしながら、O2O(オンライン・トゥ・オフライン)の分野でもLINEと連携を深めていきたい」と語った。