不動産賃貸ポータルサイト「CHINTAI」を運営するCHINTAI(東京都港区)が、昨年11月から、マーケティングに必要な社内外の多くのデータを統合して1つのダッシュボードで示し、データの分析を速めて早期に手を打つ取り組みを本格的に始め、成果を上げている。

CHINTAIが取り組んだのは、自社のデジタルマーケティング部門が自社ポータルサイトから得たり、リスティング広告などを展開した際に得たりするデータ、顧客である不動産会社を担当する自社の営業部門が持つ売り上げデータ、顧客である不動産会社から得られる地域別、店舗別の問い合わせ件数といったデータなど、社内外に散在していたデータを統合して、1つのダッシュボードにリアルタイムで表示することだ。異なるフォーマットのデータを統合して表示するには、マーケティング支援企業のDatorama Japan(デートラマジャパン:東京都千代田区)が提供するデータ統合ソリューション「Datorama」を使った。
CHINTAI執行役員の溝呂木聰メディアディビジョン副本部長は、「これまではバラバラに見ていたデータを俯瞰して、それもリアルタイムの数字をダッシュボードで見ることができるようになったため、データを確認して仮説を立て、すぐに次のアクションに移れる。デジタルの施策の場合、その結果もすぐに検証できる。週次レポートを見てから施策の効果を検証し、次の打ち手を検討していた以前と比べ、課題を発見するスピードが早まり、PDCAを迅速に回せるようになった」とその効果を説明する。
例えば、ポータルサイトへの集客が好調で、顧客である不動産会社への問い合わせ件数も全国で見たら順調に伸び、CHINTAIの売り上げも増えているという状況でも、データを詳細に分析したら特定のエリアだけ問い合わせ件数が伸びていないということはある。データが散在していたこれまでは、こうしたことに気付くのに時間がかかったが、今回の取り組みを進めた結果、すぐに気づき、手を打てるようになった。
データ分析ですぐ修正
実際、ある県全体の問い合わせ件数が月次の計画通りに伸びていないと月の半ばに気づいた。そこで、その県の不動産会社のリアル店にユーザーの問い合わせが向かうように、当該月分のデジタル広告の予算配分を組み替えて、残りの半月で、その県重視の広告を打つように変えたり、ポータルサイト上に出す情報を入れ替えたりした。その結果、ある県全体の問い合わせ件数の当該月の目標は達成されたという。
CHINTAIでは、統合したダッシュボードから分析した結果に基づき、顧客である不動産会社に提案することにも力を入れる。不動産会社自身も自社のリアル店の状況は把握しているものの、「全国の状況と比べてより好調か、時系列で見たときに全国あるいはエリアの趨勢と歩調を合わせているかなどは、すぐには分からないことも多い」(溝呂木氏)。そこでCHINTAIがダッシュボードから分析した結果を示し、CHINTAIが実施するデジタル施策とともに提案するというわけだ。
今後は、「データを活用することで、CHINTAIで賃貸物件を探すユーザーに何らかの価値を与え、弊社の売り上げ・利益に貢献する」(溝呂木氏)ことを目指す。例えば、物件の設備データや価格データなどを合わせて分析し、東京・赤坂で勤務し、東京メトロ・丸の内線沿線の杉並区で賃貸物件を探すユーザーに対して、東京・浅草や北千住にあるより安く、より広い賃貸物件をサイト上で推奨するサービスなどを考えているという。