ヤマハがWeb会員組織「ヤマハミュージックメンバーズ」を活用したCRM(顧客関係管理)戦略を推し進めている。4月から自社で発行するクレジットカードの会員にネットから申し込めるようにする。これまでは楽器店などリアルの接点でしか申し込めないことから高かった、登録のハードルを下げる狙いがある。

 さらに今夏には、ヤマハミュージックメンバーズの会員サイトに、所有楽器を登録できる機能を追加する。ヤマハはこうして会員データを厚くすることで、データを活用したワン・トゥ・ワンのマーケティングに取り組んでいく。CRMを強化することで、優良顧客を増やし、1人当たりのLTV(顧客生涯価値)を高めると同時に、その顧客を通じたクチコミによる新たなファンの拡大を狙う。

新たに有料プランを設けたワケ

 ヤマハは昨年7月に無料のWeb会員の仕組みを構築した。従来のクレジットカードを中心とした会員組織は、登録のハードルが高い。無料の会員組織を設けることで会員のすそ野を広げた。それと同時に、Web会員のデータベースをクレジットカード会員の情報と統合。これを総称するのが、ヤマハミュージックメンバーズだ。 同会員組織は「無料会員」「有料会員」「クレジットカード会員」という3つの階層で成り立つ。この制度のユニークな点が、1500円の年会費がかかる有料会員プラン「プレミアム会員」を設けている点だ。会報誌を発行するほか、オーケストラのバックステージツアーといったイベントの参加費が割安になるなどの特典が得られる。

Web会員組織「ヤマハミュージックメンバーズ」の会員サイト
Web会員組織「ヤマハミュージックメンバーズ」の会員サイト

 メーカーの会員サイトは無料で利用できることが大半。有料プランを用意した理由について、ヤマハミュージックジャパン事業企画部の鞍掛靖部長はこう説明する。「ファン作りのための施策は、短期間では大きな収益を生むことになりづらい。なので、一定の収益を担保しながら進めなければ、コストカットの対象として廃止に追い込まれてしまう恐れがある」。有料プランを設けることで運用費を自ら賄いながら、継続的なサービスの提供を目指す。

 会員組織の階層とは別に、無料会員と有料会員で共通のランク制度も設けている。これは会員のサービス利用を活性化させるのが目的だ。会員はマイページにログインしたり、アンケートに回答したりすることで、スコアがたまる。このスコアに応じて、CからSSまで5段階でランクが上がっていく。ただし、無料会員の場合には最高でもAランクとなる。このランクが高まるにつれて、参加できるイベントが増えるなどの特典がつく。さらに今夏には、所有している楽器の登録機能も追加することでスコアが高まる機能を追加する。これにより、会員がどんな楽器を所有しているかといったデータを取得する。

 蓄積した会員データはパーソナライズした情報発信に活用していく。既に会員登録情報に応じて、オーディオ製品に関心が高い会員には楽器のニュースなどは送らないなど、コンテンツを切り分けたメール配信をすることで、開封率を以前の30%から50%まで高める成果につなげている。楽器の登録機能を使って会員データを厚くすることで、このパーソナライズの精度の向上につなげる。

 とはいえ、スマートフォンの普及によってメール自体の利用は減少傾向にある。そこでチャネル拡大を狙い、昨年11月にはスマートフォン向けアプリの提供も開始した。昨年11月の楽器関連イベントでは、同アプリを活用して、イベント会場で電子スタンプを集めることで景品がもらえるスタンプラリー企画を実施。スタンプをすべて集めた会員に対して、ヤマハの直営店への来店で別の景品をプレゼントするチラシを配布した。その結果、対象者の10%が来店するなど集客にもつながった。こうした取り組みを実施することで、情報発信だけではなく、直接的な来店の促進にも取り組んでいく。