2月27日、2017年最初の日経デジタルマーケティング読者無料セミナー「3時間で丸ごと理解!LINE活用のフロントライン」が東京・大崎で開催された。セミナーにはまずLINE上級執行役員の田端信太郎氏が登壇した。
田端氏は冒頭、参加者にプライベートで「LINE」を利用している人は少なくないと思うが、そのビジネスモデルを理解している人は多くないのでは?と会場に問いかけた。

LINEはおよそ半年前に東証1部に上場し、現在時価総額約8000億円を誇る。従来はゲームやスタンプの販売が売り上げの多くを占めていたが、現在では、潜在顧客への理解促進から新規の顧客獲得、そしてCRM(顧客関係管理)まで、マーケティングファネルの各段階で企業が活用できるサービスを拡充した。この結果、売り上げの約4割を法人向けビジネスが占めるに至っているという。
そして田端氏は、コカ・コーラ社のアプリCoke ON(コーク オン)での自らの体験に基づき、「今後、スマートフォンをより重視しても、しすぎることはない。デバイスとしての普及は8合目まできているかもしれないが、それを前提としての商売のあり方、仕事の仕方、暮らし方が普及するのは、まだまだこれからだ」と語った。
LINEの法人向け公式アカウント数は右肩上がりで増えており、現在は250社を超えた。ファッション業界で言えば、GUからルイ・ヴィトンまで、その顧客層の広さもLINEの特徴だ。さまざまな業種が公式アカウントを集客や商品理解の促進に使うことが一般的になってきた。また、少なくとも月額250万円は必要な公式アカウントに対して、月額5400円から使える中小企業向けのサービス「LINE@」の利用社数は、既に約25万を超えている。これらは、単に電話やメールの機能を置換したものではなく、例えば10回来店すれば特典がもらえる会員証のようなものとしても利用されている。
さらに、3年前に立ち上げたサービス「LINEビジネスコネクト」の導入企業数も140社を超えたという。これはLINEと企業のシステムを連携して動作させることで、企業の持つデータを基に、個別のユーザーごとに異なる内容のメッセージなどを配信可能にするサービスだ。当初から反響は大きかったものの、LINEが提供するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を用いた後は、企業側で新たに開発が必要な仕様だったため、導入1年目はわずか3社と苦戦したという。そこでパートナー制度を導入し、米セールスフォースやDACといったクラウド系のサービスを提供する企業と提携し、それらのツールを用いて容易に利用できる体制を整えた結果、普及が進んだという。
スマートフォンへの移行はマーケティング上の重大事
「こうした経緯を踏まえ、昨年から今年にかけて、単なる一方通行の広告ビークルとしてだけでなく、統合的なマーケティング、具体的には認知の獲得からリテンションのところまでカバーすることが可能になってきた」と田端氏は話す。
また、消費者が優先的に使うメディアがテレビやパソコンなどからスマートフォンに移行していることを、もっと重視すべきと警鐘を鳴らす。消費者が閲覧する画面が小さくなった事象だけを見てサッカーとフットサルほどの違いと捉えるのではなく、サッカーとラグビーほどルールが異なるものだと理解する必要があると訴えた。
そして数々のアプリがリリースされる中、月に10回以上使われるものは12個しかないというデータを提示。併せて、スマートフォンを1日平均9分しか使わないライトユーザーと4時間以上使うヘビーユーザーのいずれも、もっとも使うアプリとしてLINEを選んでいることを示した。
「スマートフォン向けのネイティブアプリは、制作しても消費者にインストールしてもらうためにそれなりのコストが必要で、かつアクティブでいてもらい続けることも難しい。また従来はメールアドレスの収集がデジタルマーケティングの基本だったが、もはや意味がない。今時の若い世代にはメールアドレスすらもたない人たちもいる。そしてLINEは、スマートフォンの代表的なOSであるiOSとアンドロイドの2つに対応し、そういった層に一番使ってもらえるプラットフォームであると捉えてほしい」と強調した。
最後に田端氏は、「ラインワークスという新たなサービスを立ち上げた。これによって、これまで分断されていた攻めのマーケティングと守りのカスタマーサポートを統合し、攻守一体となったマーケティングが可能になる。我々は、『Closing the distance』という企業ミッションの通り、ブランドと消費者の距離を縮めていきたい。少し大仰かもしれないが、今後3年でLINEは社会問題を解決するインフラとなるべく邁進していく」と語り、講演を締めくくった。