地域コミュニティサイトも苦境
位置情報、地域情報サービスも、勝者が見えづらい領域だ。Facebookユーザーの場合、Facebookのチェックイン機能を使うケースが目立つ。チェックインの回数に応じて何かが与えられるため、毎日のように特定の場所でチェックインするユーザーは近年、見かけなくなった。安易に居場所を明かすことはリスクでもあるため、GPS機能をオフにしている人が多いことも影響していそうだ。チェックインに応じてクーポンをプレゼントするキャンペーン施策も最近は低調だ。
地域コミュニティサイトは、その場をサードプレイスとして半常駐するようなユーザーが一定数に達しないと、広告モデルの展開が難しい。飲食店の探し方ひとつとっても、昨今の若者はInstagramやTwitterで「池袋 ラーメン」などのキーワードやハッシュタグ検索から好みの店を見つけて出向くスタイルに変わっている。
かつてエイチ・アイ・エスは、ネクスト(現ライフル)が運営していた地域コミュニティサイト「Lococom(ロココム)」内に全営業所のページを作成、運営していたことがある。また佐賀県の武雄市は、樋渡啓祐氏が市長だった当時、市のサイトをFacebookページ上に移管したことがあった。新しいサービスは魅力的に映るが、他社が運用するメディアに依存すれば、仕様変更を受け入れざるをえなかったり、サービスが終了したりすることもある。
メルマガにもいよいよ休刊ラッシュの波が訪れているようだ。「メルマガが効かない」は今に始まった現象ではないが、2015年までは「脱メルマガ」をテーマに取材しようにも、やめた実例は希少だった。それがこの2年で「メルマガ離れ」が進行している。終了後の情報配信は、LINE@に誘導する企業が目立つ。
はなまるうどんは、2015年11月のメルマガ終了に合わせて、アライドアーキテクツが運営するSNSマーケティングプラットフォーム「モニプラ」上に自社ファンサイトを開設し、各種SNSで発信している情報を集約。クーポンやプレゼントキャンペーンを実施し、店舗への送客を図った。2017年4月には公式アプリをリリース。利用度合いに応じてポイントが貯まり、クーポンに交換できるゲーミフィケーション要素を加味して来店効果を狙う。モニプラ上のファンサイトは昨年で閉鎖した。
運用終了後の後処理に注意
ECサイト・モール、ソーシャルギフトでも撤退するサービスが相次いでいる。パルコのように、「カエルパルコ」へのリソース投入を理由とする前向きな撤退もある。
ソーシャルギフトの「ギフトナウ」はサービス終了後、他者にドメインを取得され、アクセスすると東京・巣鴨の風俗情報が表示される。運用終了後のWebサイトやSNSの後処理には注意が必要だ。
最後に「Tポイント」や「Ponta」など共通ポイントサービスに加盟する企業の離脱状況を見ておきたい。ニッセンとコンフォートホテルはTポイント離脱後、自前の会員制度を創設し、ポイントプログラムを運用している。2017年3月までTポイント陣営だったホテル京阪チェーンは、2017年12月からPonta陣営に鞍替えした。Tポイント、Pontaのほか、dポイント、楽天スーパーポイントと共通ポイントサービスは4強の時代を迎えている。マクドナルドは後発のdポイントと楽天ポイントの両サービスに加盟して、来店のきっかけを作りたい考えだ。
加盟することで顧客層が広がりそう、あるいは、一通り取り込み済みといった加盟各社の判断で、今後も加盟と離脱が進みそうだ。
ネットサービスは開始してほんの数年で、企画時に想定していた利用状況やサービスを取り巻く環境に変化が生じる。それをいち早く見抜いて対応しなければ、あっという間にピントのズレた古臭いサービスに転落してしまう。
全体としては活況を呈しているデジタルメディア・サービスだが、個々のサービスが皆、左団扇で成長できるほど甘くはない。本誌は時代の先読みと素早い意思決定で荒波を乗り越えていくデジタル事業者・従事者を今後も応援していく。