最近も「Zipper」や「BIG tomorrow」が休刊するなど、雑誌メディアには厳しい状況が続いている。一時代を築いた有名雑誌の休刊が報じられると、「あの頃は毎号読んでた」「そういえば最近は読んでいなかった」といった感想ツイートが飛び交い、「ネットに取って代わられた」という“分析”で締めくくられる。多くの場合、その通りであろう。では飛ぶ鳥を落とす勢いのネットオリエンテッドなサービス群は、果たしてかつての人気雑誌のように長く人気を保っているのだろうか。その実相に迫るのが本特集の狙いである。
現在、国内で最も利用者が多く盤石の人気を誇っているサービスは何か?Yahoo! JAPANか、YouTubeか、ユーザー数の多さと利用頻度の高さからするとやはりLINEだろう。
国内のアクティブユーザー数は推定7100万人を超え、日本の人口の56%を占める。スマートフォンユーザーの大半はLINEユーザーだ。アクティブユーザーのうち毎日利用率は84%に上る。
そんなLINEでも、死角はなくはない。下の表は最近、LINE公式アカウントの運用を終了した企業・ブランドの一覧である。公式アカウントの離脱と参入は常に起きていることではあるが、2017年暮れから2018年2月にかけては有名・有力企業のアカウント終了が目立つ。
注目は日本マクドナルドだろう。同社がLINE公式アカウントを開設したのは2013年6月。ユニクロと同日だった。LINEが企業向け公式アカウントを開設したのは前年6月なので、1年が経過してからの参入だが、それでも古参の部類に入る。2017年は、マック対マクドの対決企画や、ヘーホンホヘホハイ(ベーコンポテトパイ)の案内、グラコロセットのクーポンなどキャンペーン情報のほか、店頭で画面を見せるだけで割引されるクーポンを配信していた。
マクドナルドがLINEからの離脱を決めた背景には、SNSに対する独自の選別基準がある。それは拡散性だ。ゆえに、拡散性で優位に立つTwitterを最も活用している。FacebookページとInstagramアカウントも開設はしているものの、Instagramは直近の投稿が森永ミルクキャラメルのマックフルーリーを期間限定で発売した2017年5月で、長らく放置状態だ(2018年2月14日時点)。Facebookページも週1~2回の投稿で、CSR(企業の社会的責任)活動の紹介が目立つ。
一方のLINEは、公式アカウントの開設、維持にかかるコストが高額なため、費用対効果は意識せざるを得ない。マクドナルドは1000万人超の友だち数を持っていたが、ブロックしているユーザーもおり、また公式アカウントが少なかった開設当初に比べると、どうしても配信に対する反応率は落ちてくる。数の上では5分の1規模でも220万人超のフォロワーがいるTwitterアカウントは、リツイートの伝播を考慮するとリーチが取りやすい。拡散しやすい投稿スタイルを習得してTwitter巧者になるほど、LINEの費用対効果が問題として浮上することになる。
ほかにも、オートバイ買い取りのバイク王が2017年8月、大学受験予備校の東進が同年9月に、LINE公式からLINE@へとアカウントを移行した。費用対効果をにらみながら各社が動き始めている。
ユーザー側の利用状況も変化が見られる。若者のネット依存が心配されるほどの利用過多な時期は過ぎ、逆に「メッセージを送ってもなかなか既読マークが付かない」という話が聞かれるようになった。正常化に向かっているとも言える。ただ、LINEへのアクセスが1日十数回から1日数回に激減しても、デイリーアクティブユーザーに変わりはないため、その変化は数字で把握しづらい。調査データより利用状況の観察の方が、利用実態の変化をつかめそうだ。
早々に消えた共同購入型クーポン
LINEとは対照的に、期待感ばかり先行して参入が相次ぐものの内容が追いつかず早々に“バブル”が崩壊したサービスとして、共同購入型クーポンサービスが挙げられる。2010年4月に「Piku」がサービスを開始して以降、新サービスが乱立し、最盛期のサービス事業者数は200社を超えたとも言われる。
現在、残っているサービスを数えたところ、わずか7つしかなかった(販売期間を限定して出品している「GILT CITY」はやや毛色が異なるためカウントしていない)。
あまり聞きなじみのない「Eクーポン」は、元々はSBIグループと光通信が運営していた「シェアリー」が母体だ。途中、楽天が出資し、楽天傘下に入って「RaCoupon(ラクーポン)」になり、現在は再び光通信グループの運営に戻っている。そのほか「くまポン」のGMOや、2017年5月まで事業を継続した「ポンパレ」のリクルートなど、基本的に営業力のある企業が残ったと言える。レストランや美容サービスなど店舗の空き席を人海戦術で大量に商品化し、出品を充実させることがこのビジネスの肝だったようだ。
その点、転職情報サイト「ビズリーチ」の一事業としてスタートした「ルクサ」は、出品を差別化したことで成功した例だ。飲食店やエステ店以外に、舞台やミュージカルなどエンタメ系の観覧チケットが目立つのがルクサの特徴である。
ルクサのキャッチフレーズは「お得に贅沢体験」。70%OFF、80%OFFと大幅割引をウリにする他社に比べると、演劇などは割引率が低い。それでも売れ行きは好調だ。割引率より、こんなユニークな商品がある、興味深いイベントがあるという体験を提案するセレクトショップ型のスタイルで、他社と差異化を図った。結果、営業力のある大手企業との消耗戦に巻き込まれず、2015年4月にKDDIがルクサを子会社化するに至っている。