店舗はブランディング目的

 ネット発の企業ながら、店舗数を拡大しているオーマイグラス。現在7店舗の直営店を運営しているが、これを2倍程度まで拡大する意向だ。同社社長の清川忠康氏は「店舗はブランディングのための広告宣伝の意味合いが強い」と言い切る。しかし、そう言いながらも、EC企業である強みを生かした効率的な店舗運営に取り組んでいる。「人件費、賃料、広告宣伝費。この3つが店舗運営のコストの多くを占める。これをどれだけ効率化できるかが重要になる」(清川氏)。

EC起点でオムニチャネルを推進するオーマイグラス
EC起点でオムニチャネルを推進するオーマイグラス

 まず、店舗は基本的に小さくして、賃料を抑えている。「新宿店では4~5坪程度しかない」(清川氏)。メガネの加工などは、すべて本社で行う。これにより、最小限のスペースで店舗運営が可能だ。商品はECサイトの売り上げ実績から売れ筋商品だけを選んで並べる。残りの商品はすべて、店員の持つタブレット端末で案内する。基本的に店舗はブランドを体験してもらうための場として捉えており、清川氏は自社の店舗を「セミショールーム業態」と称している。実際、タブレットによる売り上げが全体の20%を占めるような店舗も存在するという。

 同社ではさらなる店舗運営の効率化に取り組んでいく。現状は、店舗にある商品を購入する際、検眼時のデータと一緒にフレームを本社に送り、レンズを削るなどの加工をした後に、顧客に配送している。今後は、店舗での検眼時のデータのみ本社に送り、これに基づいてレンズを削った後、本社に在庫として持つフレームにはめて顧客に配送することで、さらなるオペレーションの効率化も視野に入れる。

 しかし、機能やオペレーションの効率化で利便性が高まったとしても、それは「本質的な差異化にはつながらない」と清川氏は指摘する。オムニチャネルによって効率性を上げることで収益性を高め、その収益を商品開発やブランディングに投資する。「高級メガネ店では3万円で売っている商品と同品質の商品を、当社なら1万8000円で売れる。その価格で売っても、オペレーションを効率化しているから利益が出る」(清川氏)。そうして効率化と投資を繰り返すことで、強いブランドを作り、他社との差異化につなげている。

EC在庫を使い新しい価値を生成

 コナカのディファレンスやオーマイグラスのように、デジタルを活用することで店舗のコスト効率を高めて事業全体で売り上げを作る。これが、オムニチャネル成功の1つの方法だ。一方、コナカとは異なり、デジタルを活用することで自社の商品を活用した全く新しいサービスを生み出し、オムニチャネルを推進しているのが、女性向けアパレル事業のストライプインターナショナルだ。同社は「earth music&ecology」をはじめとして、多数の女性向けアパレルブランドを展開している。

ネットを活用して新しい価値を提供、顧客データ連携でLTV最大化を図る
ネットを活用して新しい価値を提供、顧客データ連携でLTV最大化を図る

 一般的なアパレルメーカーの事業は、洋服を生産して販売すること。しかしストライプインターナショナルはこの常識を覆し、洋服レンタル事業「メチャカリ」を始めた。サービス開始当初はearth music&ecologyの商品のみがレンタルの対象だったが、現在は自社の対象ブランドを増やし、他社のブランドも買い取りという形で仕入れて貸し出すことで、28ブランドにまで拡大。常時1700型を用意している。利用者は月額5800円を支払うことで、それらのブランドの洋服を1回当たり最大3着まで借りられる。借りた洋服を返却すれば、再び3着を借りられる。現在は約5000人が利用している。

 このメチャカリは、同社にとって全く新しい事業ではあるものの、既存のECサイトと在庫を共通化しているのが特徴だ。効率化を図るために在庫とそのデータを、販売とレンタルという2つのチャネルで活用している。レンタルとECサイトのどちらで利用・購入されても、在庫が1つ減少する。これも在庫活用のチャネルの拡大、つまりオムニチャネルへの対応の1つの手法と言えるだろう。さらに、レンタルされた商品は返却された後にクリーニングをして、中古の“レンタル落ち”として、スタートトゥデイが運営するブランド古着の専門ECサイト「ZOZOUSED」上に開設したブランド公式古着販売ページで半額で販売する。新品と中古品で扱うチャネルを変えることで、ブランド毀損を防ぐ。

 また、会員制度やポイントの仕組みも、ECサイトや店舗と共通化している。同社の会員制度「STRIPE CLUB」では購入金額に応じてポイントがたまる。このポイントを一定数ためるとランクが上がり、商品の購入時に最大で10%割引されるなどの優遇がある。従来は商品購入でしかポイントはたまらなかったが、メチャカリの利用でもたまるようにした。つまり、顧客はレンタルと購入を“併用”することで、よりポイントがたまりやすくなる。このIDの共通化によって、レンタルと購入の併用率を高めてLTV(顧客生涯価値)の向上を狙う。

 しかし、レンタルでも購入でも商品自体に違いはない。そのため、顧客を奪い合うのではないかという懸念もあった。そこで、サービスの本格開始に先駆けて、既存顧客を対象に試験的にレンタルサービスを提供してみた。ストライプインターナショナルでは会員IDにひも付く形で、購買データなどをすべて蓄積している。このデータを活用することで、テスト前後の3カ月で、店舗やECサイトでの購買行動を比較して、購入金額などに変化が見られるかどうか検証した。その結果、商品を購入した人の割合はテスト前後でともに約2割と変わらなかった。また、会員ランクが高い人は、メチャカリ利用後に月間購入金額が4000円超も高まる結果となった。「服を借りることで、組み合わせる洋服を購入したくなるなど、相乗効果が見込めることが分かった」(メチャカリ部の澤田昌紀部長)。レンタルサービスはむしろ顧客の購買意欲の向上につながると判断して、本格展開に踏み切った。

 メチャカリ自体の店舗展開は現時点で計画されていないものの、「今後、プロモーションを目的に期間限定ショップの開設を検討していきたい」と澤田氏は意欲を見せる。普段着を借りるというサービス自体の認知がまだ低いため、ショップを通じてサービスを体験してもらうなど、啓蒙活動に活用したい考えだ。