LINE@を活用して店舗ごとにアカウントを開設
消費行動スコア62.5で11位に食い込んだのが化粧品通販のファンケル。同社もLINEの活用の幅を広げている。2015年から取り組み始めたのが、「LINE@」の活用だ。LINE@はより安価に、LINE公式アカウントと同様、登録者に情報を発信できるサービス。異なるのは友だちを集める仕組みだ。LINE公式アカウントは、開設時に広くLINEの利用者に告知し、一気に数十万人規模の友だちを獲得できる。一方のLINE@は、店舗で登録を呼びかけるといった企業努力が必要になる。

ファンケルではこれまでLINE公式アカウントを利用してきたが、店舗では、本部とのすり合わせをした上で、店舗ごとにキャンペーンを実施している。LINE公式アカウントは登録者への一斉配信が基本で、そうした一部の地域の顧客に絞ったメッセージ配信は基本機能ではできない。そこで、試験的にLINE@を活用して、各店舗ごとのアカウントを開設した。「若年層が多い、ファミリー層が多い、といった顧客層の異なる地域を選び、全5店舗でアカウントを開設して活用を始めた」(ネット営業本部ネット営業部ネットCRMグループの江原一裕課長)。
同社のSNS上の公式アカウントへの登録理由としては、「その企業の商品を利用しているから」と答えた人の割合が最も高く、57.1%を占めた。そのため、店舗ごとにアカウントを開設して、既存客に対してよりきめ細かい情報を発信する戦略は、顧客ニーズとも非常にマッチしている。
店舗のアカウントでは、来店する客層に合わせてメッセージを配信する時間帯を変えるなど、店舗と情報を共有して現場の肌感覚に合わせた情報発信を心がけた。特に成果が大きかった店舗は、若年層の顧客が多い福岡市中央区の商業施設イムズ内に出店している店舗だ。同店舗のLINE@には約2800人の友だちがいる。その店舗のLINE@で来店を促進した場合には、通常のDMに比べて来店率が約3倍になる成果につながっているという。
このように、LINEにおいても顧客ごとに合わせた情報発信が重要になっている。しかし、LINE公式アカウントの既存メニューでは個別の情報発信はできない。そこでファンケルは昨年末に、ドミノ・ピザも活用しているLINEビジネスコネクトを採用し、LINE公式アカウントと顧客データベースを接続。LINEでも顧客情報に基づいてメッセージの出し分けを可能にした。LINEをCRMに組み込むこのような戦略も、ソーシャルメディアのオウンドメディア化の手法の1つだろう。2016年はこうした動きが他社にも広がりそうだ。
Twitter“社長”健在のハーバー
今回、第5回のランキング作成に当たり、新たに「推奨スコア」を算出した。各企業・ブランドのソーシャル接触者のうち、閲覧後の行動として「友人・知人に商品・サービスをすすめた」と答えた人の割合をスコア化している。顧客のロイヤルティ向上を判断する指標として昨今、重視されるNPS(ネットプロモータースコア)を簡略化したものと言っていい。
推奨スコアランキング首位は、前出のスギ薬局。僅差で2位につけたのが、化粧品の「ハーバー」だ。ハーバー研究所の社長は、「おそれいりこだし」のツイートでTwitter部長として名を馳せたソーシャルメディア伝道師の末広栄二氏。テーブルマーク(旧カトキチ)、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」運営のトリドールなどを経て、2014年4月にハーバー研究所に入社。昨年6月、社長に就任した。
同社が取り組んだのは、累計1000万本以上を売り上げてきた同社の主力商品である美容オイル「スクワラン」の使い方の訴求だ。コールセンターへの問い合わせや感想のハガキ、ネット上の声からは、水分が足りない肌に必要以上にオイルを付けすぎているケースが多いことが分かった。その場合、かえってカサつくこともあるため、リピート購入につながらなくなる恐れがある。
そこで正しい利用法の浸透に活用するのが動画だ。YouTubeに自社の社員が出演し、商品の使い方を実演する。化粧水を顔に付けた後、まだ顔も手も濡れているうちにオイルを一滴だけ手に垂らして伸ばし、顔を包み込むようにして付けていく。簡単ながら文字や写真では案外伝わりにくい感覚が、動画だと一目瞭然だ。これをEC(電子商取引)サイトの商品紹介ページにも張り、理解して購入してもらうことに努めている。
約900万人の友だち数を持つLINEでも、割引や安さを前面に押し出すのでなく、使い方のポイントなどをQ&Aで解説するランディングページを用意して誘導している。
こうした取り組みが実を結び、末広社長は「『もっと早く使っていれば』といったメリットを実感する声が目に見えて増え、化粧水など他商品のクロスセルも上がってきた」と手応えを得ている。購入者の納得感や満足感が高まれば、商品のファンからさらにはエバンジェリストとなって、知人への推奨意欲が高まる。これが推奨スコア上位の秘訣だ。