ランキング100社のうち29社はLINEアカウントを開設していないため、ソーシャル接触者に「情報接触するSNS」を尋ねるとトップはFacebookである。しかし「購入要因となったSNS」を尋ねるとLINEがトップだ。ではLINEを最も効果的に売り上げにつなげたのはどの企業だったのか。中部地方を地盤に全国へ展開している、調剤薬局も併設するドラッグストアの大手で、スギホールディングスの傘下にある「スギ薬局」だ。消費行動スコアこそ57.8で全体の21位にとどまるが、LINEをきっかけに商品やサービスを実際に購入した人の割合をスコアで示す「購入要因SNSがLINE」ランキングでは、同業最大手のマツモトキヨシなどを抑えて、1位に輝いた(下表参照)。

LINEでマツキヨに勝った!? スギ薬局

 スギ薬局はFacebookやTwitterを使わず、販促目的の公式ソーシャルメディアとしてリーチ力の高いLINEだけを活用する。公式アカウントを開設したのは2014年12月。2015年2月にはスタンプを配信して友だち登録者数を一気に300万人弱まで増やした。そこに、店頭で購入した総額から5%を割り引くクーポン、店頭で展開するキャンペーンの告知、公式アプリのインストールのお誘いなどを、週1回ペースで流す。

スギ薬局のLINE向けクーポン。他にメーカーの特定商品対象クーポンもある
スギ薬局のLINE向けクーポン。他にメーカーの特定商品対象クーポンもある

 店舗での購入意欲に直接結びついているのは、やはり割引クーポンだ。ソーシャルメディアを登録した理由として「クーポンがもらえたから」を挙げた人の割合は50.7%。これはマクドナルド(63.7%)、ドミノ・ピザ(53.6%)に次いで多い。加えて、配信のタイミングと中味を工夫していることも、LINEの友だち登録者の購入意欲を刺激している。

 まずLINEに情報を流す日は、新聞折り込みや店頭などでチラシが配布されるのと原則、同じ日だ。「チラシを見て他にお得な情報はないかと思ってLINEをチェックする。あるいはLINEを見てからチラシなどでその他の情報を確認する。チラシと同日にLINEに情報を流すことで、LINEユーザーの購入意欲は高まると考えている」とスギ薬局販売促進部店舗販促課の永野満子氏は言う。

 また、チラシやテレビCMなどと同じ内容を、LINEには原則、同時に流さない。永野氏の部署には、その週のチラシからテレビCM、スマートフォン向けアプリ、店舗の店内放送で流す内容まで、すべての販促情報が集約される。そこで永野氏は、「同じ内容が同時にLINEユーザーに届かないように、情報を選別して流している」という。LINEでしか見られない独自クーポンや告知情報が、LINEの友だち登録者の購入意欲を高めるというわけだ。

 もう一つ、この1年でマスメディアに対するスギ薬局の露出量が急増したことも、「スギ薬局に対する信頼感が高まり、実際に店舗で商品を買おうとする動きを後押ししているのでは」(スギホールディングス広報・CSR室の日野清孝室長)という。

 スギ薬局の広報も担当するスギホールディングスは2015年4月から、責任者の日野氏自身が東京に本社を置く全国紙や全国ネットのテレビ局などを訪問して同社をアピール。取材依頼も原則すべて受け始めた。

 その結果、昨年4月と今年1月では、「マスメディアへの露出量は2倍に増えた」(日野氏)。しかも「以前は露出の80%が地元・名古屋のメディアだったが、今は露出の80%が全国ネットや全国紙」(日野氏)という。LINE×マスの組み合わせが、新規客の獲得と店舗集客に威力を発揮した。

Webマガジンに誘導するGU

 これまでソーシャルメディアは、評判を得るメディア、すなわちアーンドメディアとして位置付けられてきた。しかし、ソーシャルメディアのマーケティング活用の普及と、プラットフォームの進化によって、先進的な企業の間ではオウンドメディアに取り込もうという動きが始まっている。本調査でも、自社のCRM(顧客関係管理)の一環として、ソーシャルメディアをオウンドメディアに取り込む企業が上位に入った。

 消費行動スコア69.6でランキング2位となった、アパレルブランド「GU」を展開するジーユーもその一社。ジーユーでは現在、ソーシャルメディアより、オウンドメディアの方が注力すべき施策としての優先順位が高い。そのため、以前は積極的に実施していたFacebookなどと連携した販促策は、「ここ最近はほとんど実施していない」(マーケティング部マーケティングチームの萩原将人リーダー)。Twitterも同様に「ニュースを拡散したい時にだけ、ツイートする程度」(萩原氏)だという。

GUは自社アプリにInstagramを統合
GUは自社アプリにInstagramを統合

 それらのソーシャルメディアの優先順位を下げる一方で、情報発信の幅を広げているのがLINE公式アカウントだ。ジーユーにおいては、LINE公式アカウントも、オウンドメディアの延長線上と位置付けるからだ。なぜ、そうした考えを持つのか。萩原氏はこう説明する。「消費者の手元に直接情報を届けられるLINEは、メールマガジンと同様の存在だ。そのため、LINE上の友だちはメルマガ読者と同じ当社の“会員”として捉えている」。

 しかも、ジーユーのLINE公式アカウントの友だち数は2000万人を超える規模にまで拡大している。それゆえ、LINE公式アカウントはジーユーにとって一層、重要な存在になっている。本調査においてもジーユーはLINEで情報に接触していると回答した人が42.0%で全企業・ブランドの中で最も高い数値となった。

 この利点を生かして、ジーユーはブランドや商品にまつわるさまざまな情報発信を始めている。LINEは従来、クーポンを提供して、来店促進につなげるという使われ方をするケースが多かった。しかし、クーポンの過度なバラまきはブランドの毀損につながりかねない。そこで、「クーポンのバラまきから脱却して、商品やブランドの情報や価値を伝えることを目指している」(萩原氏)。

 ジーユーがより多角的に情報を伝えるため、昨年から取り組んでいるのがコンテンツマーケティングだ。ジーユーは昨年3月に毎月更新のWebファッションマガジン「G.PAPER」を創刊した。G.PAPERでは、編集部がピックアップしたお薦め商品や男女別のスナップ写真、モデルによる着こなしなど、さまざまなコンテンツを用意している。これらのコンテンツもLINE経由で案内して、サイトへの誘導を図っている。現在も、配信するコンテンツの中心はチラシだが、それらにG.PAPERのコンテンツを織り交ぜて、商品やブランドへの好意度の向上を狙う。

 また、LINEだけではなくInstagramもオウンドメディアに取り込んでいる。ジーユーは顧客が撮影したコーディネート写真の投稿プラットフォームとして、自社のスマートフォンアプリ「GUアプリ」に組み込んだ。スマートフォンアプリ経由でコーディネート写真を投稿すると、「#GUMANIA」というハッシュタグがついて、Instagram上に投稿される。投稿された写真は、アプリ上で閲覧できる。この機能を利用して毎週100~200の写真が投稿されるなど、人気コンテンツとなっている。

 写真はアプリ上に加えInstagramにも同時投稿されるため、より幅広い人に閲覧してもらえる可能性がある。自社アプリのロイヤルティを高めながら、同時にSNS上にGU商品を使ったコーディネート写真が拡散されていくことを狙っている。広告よりも、クチコミの方が情報の信頼度が高いと考えているため、消費者によるリアルの着こなしが広がることが、結果的にGUブランドの向上や消費行動につながると見る。このように、ソーシャルメディアをうまくオウンドメディアに取り込むことで、消費行動につなげている。