LINEで注文を完結させたり、オウンドメディアと位置づけたりする新たな取り組みが広がり、上位の顔ぶれは大きく変わった。活用巧者の取り組みを追う。

 LINE活用はクーポンのバラまき型からワン・トゥ・ワン対応へ──。一定の知名度を持つ企業・ブランドにとってLINE活用といえば、公式アカウントの開設と同時にスタンプを配信して一気に数百万人単位の「友だち」をかき集め、一斉に割引クーポンを配信する。それが王道だった。だがLINEアカウント開設企業が増えてユーザーが友だち登録するブランドも増えるにつれ、クーポンを闇雲に乱発することは、ユーザーから飽きられたり、年中安売りをしているように見られたりと、おトク感よりもネガティブな印象を与えてブランド毀損につながりかねない懸念も強まってきた。

 そんな中、バラまき施策から一歩先に進んで、新しい取り組みに挑む企業も登場している。「LINEで注文まで完結する」「コンテンツマーケティングでWebマガジンに誘導するツールとして活用する」「店舗単位でLINE@も併設して地域特性に合った情報を発信する」など。そうしたひと工夫加えた企業が、売り上げ貢献の面でも成果を上げていた。これが今回で第5回を迎える「ソーシャル活用売上ランキング」から見えてきた結論である。

2016年消費行動スコアランキング・トップ20(スコアは偏差値)
2016年消費行動スコアランキング・トップ20(スコアは偏差値)

 ランキング上位企業や大きく順位を上げた企業の紹介の前に、まずランキングの概要を説明する。

 ソーシャルメディア活用の成果について社内で経営陣に報告する際、ファン数の増加や「いいね!」がたくさん付いてエンゲージメント率が向上といった内容では今どきなかなか理解されない。本調査は企業が開設・運営するソーシャルメディアの売り上げ貢献度を明らかにするものだ。Facebookのファン数やTwitterのフォロワー数、L I N Eの友だち数、YouTubeのチャンネル登録者数・再生回数などを調査し、業種バランスも考慮して企業・ブランドをノミネート。昨年12月から年明けにかけて1万7233人の消費者アンケートを実施した。

 全100社・ブランドのアカウントについて登録または閲覧していると答えた「ソーシャル接触者」のうち、「購入や利用の候補に加えた」「購入・利用した」「繰り返し購入・利用するようになった」と回答した人の割合を算出し、偏差値化したものを「消費行動スコア」としてランキングした。

LINEで注文完結のドミノ

 上位企業の顔触れを見ていこう。首位に立ったのは「ドミノ・ピザ」。消費行動スコアは昨年の55.7から15ポイント以上高い71.2をマークし、昨年の24位から一躍トップに躍り出た。ソーシャル接触者のうち、「購入・利用した」と「繰り返し購入・利用するようになった」がともに3位で、新規客のみならずリピーターもしっかり確保している。

 運営元のドミノ・ピザ ジャパン(東京千代田区)が2015年に取り組んだのが、LINEからピザを注文できるサービス「ドミノ簡単注文」だ。企業向けシステム「LINEビジネスコネクト」を活用したもので、昨年9月1日、LINEの公式アカウント開設と同時にサービスを開始した。SBI証券でLINEから成行買い注文のみ株式発注できるサービスがあるが、リアルな商品のオーダーをLINEで済ませるサービスを全国展開するのは、同社が初めてだ。

 手順は次の通り。まず公式アカウントでドミノ・ピザを友だち登録した後、「ドミノ簡単注文」をタップ。表示されるお客様登録専用URLからメールアドレスとパスワードを登録し、コネクトする。写真入りで表示される簡単注文画面から注文するピザやそのサイズ、トッピング、サイドメニューを選んで「注文する」ボタンをタップすると、注文内容がドミノ・ピザとのトーク画面に表示される。その内容でOKならば「1」、やり直す場合は「2」を入力するという具合にLINEらしい対話スタイルで注文は進む。

 配達場所は、LINEの位置情報送信機能を使う。トークメニューから位置情報を選択し、現在地が表示されるGoogleマップを確認しながら送信。配達希望時間帯や支払いについてもLINEのトークで進めていく。

 同社マーケティング部長の池田健二氏は、「生活のインフラになっているLINEを活用する以上、普段のトークの感覚で気軽に注文できるチャネルにしたかった」と説明する。

 手応えは上々だ。開始4カ月でLINE経由の売り上げは1億円を突破した。これは2010年春にリリースしたiPhone向けアプリからの注文とほぼ同ペース。アプリはその後Android版も加わり、1年2カ月で5億円を売り上げている。LINEの友だち数は2月12日時点で約66万5000人。スタンプ施策を打つなどして登録者を増やし、LINE注文の認知を広げられれば伸びる余地は大きい。

LINEを使ったドミノ・ピザのクーポンと簡単注文
LINEを使ったドミノ・ピザのクーポンと簡単注文
LINEを使ったドミノ・ピザのクーポンと簡単注文

 同社はLINEのほかにも主要ソーシャルメディアをフル活用している。昨年10月25日、新商品「冬のクワトロリッチ」に使う新生地「パンピザ」の試食会を全国277店舗で実施することをTwitterやFacebookで告知すると、全国で約3万人が行列し、SNS上に多数の感想が上がった。その後、パンピザの感想や写真をハッシュタグ「#ドミノパンピザ」付きでTwitterやInstagramに投稿すると、抽選でギフトカードが当たるキャンペーンを実施し、多数の投稿と拡散を得た。ファンの声を売り上げにつなげるワザにも長けている。

 現在、電話注文とネット注文の比はほぼ五分五分だが、「ネット限定割引中はネット注文が8割になることもある」(同社WEBマーケティング課シニアスペシャリストの廣田耕一氏)という。これを常時8割に持っていくのが当面の目標だ。LINEにもチャネルを持った同社が目標を達成する日はそう遠くなさそうだ。

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