キリンはここ1年ほど運用してきたプライベートDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)の活用を本格化する。キリン商品を購入してくれる消費者の行動やキャンペーン施策の結果データなどを集約・分析し、商品の購入頻度・金額を高めてLTV(顧客生涯価値)向上につなげるチャネルミックス型施策を展開していく方針だ。

2016年末に導入したトレジャーデータのDMP「TREASURE CDP」を利用し、ネットで展開したキャンペーン施策への応募状況データ、ブランド単位で保有していた約500万人分の会員データ(会員ID)、さらに販促イベントや店頭施策などリアルな場で展開したキャンペーンデータなどを蓄積して分析。その結果、マーケティング施策の効果向上につながるさまざまな知見を得られたという。例えば、同社が展開するコンセプトショップ、直営店、ビール工場見学などを体験した人と、体験していない人とを比較すると、リアルな拠点での体験をした人は、その後にキリン商品を購入する割合が5~10%ほど向上することが分かった。
プライベートDMP活用などを担当するデジタルマーケティング部の中嶋直樹氏は、この知見の価値について語る。「工場見学などをした人がキリン商品、ブランドに対する好感やエンゲージメントが高まるであろうことは想像が付いていた。しかし、その肌感覚をDMPによるデータ分析で確かめられた意義は大きい。一般的なキャンペーン施策で、キリン商品を購入してこなかった新規客を10%増やすのは極めて困難だが、工場見学などが実際に新規客を増やしていることがハッキリしたからだ」。
一方で、工場見学のような体験型施策は時間の経過とともに効果が薄れる。そこで見学などをしてから時間が経過していないタイミングで、例えば「(グループ会社が展開する飲食店)キリンシティに行けば、工場で飲んだものと同様の注ぎ方でビールが楽しめます」といった案内メールを発信。キリンが提供している体験価値を再認識してもらったり、補完したりするコンテンツ、打ち手をチャネルミックス型で実施できる体制を整えていく。
「一般的なデータ活用では過去の行動データを分析してターゲティングすることが多い。これからは、こちらから施策を打ち、そのコンテンツにどうに反応したかによって、セグメントを作り、次の手を変えていく。そうしたデータの活用法が有効だと考えている」(中嶋氏)という。
こうした新方針に基づき、既に導入しているセールスフォースの「Marketing Cloud」を活用した会員サイトでのコンテンツの出し分け、メールやLINEによるプッシュ通知などを通じて、パーソナライズした情報発信施策を展開。さらなるLTV向上につなげていきたい考えだ。