パナソニックがネットを活用した新しい事業を生み出すための、オープンイノベーションに力を入れている。同社は3月に米国テキサス州のオースチンで開催されるイベント「SXSW 2017(サウス・バイ・サウスウエスト)」で、開発中も含む8つのプロジェクトを発表する。その様子はパナソニックのFacebookページなどで随時、公開する。構想段階からイベントやネットを通じて社外にアピールすることで、社内外から事業に対する意見や協力企業を募る。

こうした活動は昨年7月、家電領域を中心に新規事業の創出に向けた新たなプロジェクト「Game Changer Catapult」の発足を機に本格化した。「構造改革などで増益を続けているが、売上高は横ばい。こうした状況を打開するには、新たな事業の開発が求められる」(パナソニックアプライアンス社事業開発センターGame Changer Catapultの深田昌則代表)。
Game Changer Catapultは、その新たな事業の種を社内公募することで、アイデアを出しやすい社内風土を醸成。その中から実現性の高い案に対して開発費やマーケティング費などを支援する活動だ。この活動で目指すのはインターネットに接続された家電製品、つまりIoT(インターネット・オブ・シングス)を軸としながら、ネットを活用して顧客と継続的な関係を構築できるサービスの開発だ。従来の製品売り切り型のモデルからの脱却を狙う。
コーヒー豆の定期宅配事業を展開
4月に発売予定のコーヒー豆の焙煎機「The Roast」は、本プロジェクトと直接関係はないものの、サービス型への転換を示す具体例だ。この焙煎機は専用のスマートフォン向けアプリと一緒に利用する。The Roast用コーヒー豆のパッケージに印刷されたQRコードをアプリで読み込むと、豆ごとに設定された焙煎プログラムがダウンロードされる。そのプログラムを、コーヒー豆をセットした焙煎機に送信すると焙煎ができる。またコーヒー豆は、パナソニックのWebサイトから購入する。
SXSWでも、家電製品とネットをつないだ事業構想を複数発表する。1つはThe Roastと近しい事業モデルを横展開するもの。例えば、味噌などの発酵食品を作れる家電製品を開発し、併せて独自の酵母を持つ利用者のコミュニティーをネット上に構築して情報交換や酵母入手の場として活用してもらう。もう1つはネット接続された壁掛けディスプレーを活用したもの。動画のマーケットプレイスを用意し、映像クリエーターの作品を自由に入手できるようにする他、閲覧した動画から趣味嗜好を分析し、利用者の好みにパーソナライズした動画を自動的に配信する。
SXSWではこういった事業モデルの構想を8つ、来場者に紹介する。構想段階から情報を公にして賛同者を募り、そこから提携先の候補を見つけるなどして、事業の実現へとつなげたい考えだ。