全世界で1400万件以上ダウンロードされている、位置情報を活用したスマートフォン向けゲームアプリ「Ingress」。このゲームをいち早くマーケティングに取り入れているのが、三菱東京UFJ銀行だ。活用を始めたのは昨年6月から。当初は支店やATM(現金自動預け払い機)の認知拡大などが目的だったが、9月からはデビットカード「三菱東京UFJVISAデビット」の新規申し込みなどにも活用の幅を広げている。

三菱東京UFJ銀行が取り入れたIngressの画面
三菱東京UFJ銀行が取り入れたIngressの画面

 「Do Smart もっと、ずっと、あなたに寄り添う銀行へ。」

 これは、三菱東京UFJ銀行が掲げるスローガンだ。同行ブランドの認知度は既に国内では十分だが、一人ひとりに寄り添い、深い関係性を築いていきたいという思いが込められている。ところが、支店やATMがどこにあるのかが、十分に知られていない。そんな課題がIngressを提供するナイアンティック(東京都港区)による、ゲーム利用者へのアンケート調査から浮き彫りになった。

 調査は口座を開設している銀行と、メーンバンクの銘柄を尋ねる内容だった。口座の開設数では同行が最も多かったものの、メーンバンクの銘柄にはばらつきが見られた。その理由の多くが、「三菱東京UFJ銀行は支店やATMの設置場所が不便」というもの。支店数では他行に引けは取らないが、それが十分認知されていないことが明らかになった。そこで、Ingressを活用することで、このギャップを埋めることを狙った。

 Ingressは、利用開始時に2つのチームのいずれかを選択し、リアルの世界に設置された拠点(ポータル)を奪い合う陣取りゲームだ。拠点に設定された駅や神社仏閣、公園などにスマートフォンを持って近づき、その拠点を占拠して、陣地を広げていく。この、実際にその場所に赴く必要があるという点がポイントだ。

 通常、企業が展開する商業施設などは拠点にならない。同行はナイアンティックと提携して支店とATM、約1700カ所を拠点化した。ゲーム利用者は、拠点を占拠するには支店やATMの位置を調べる必要がある。こうして店舗の位置を覚えてもらうことを狙った。

「MUFG」冠するアイテムが人気

 また、拠点を占拠するとゲーム上のアイテムが手に入ることがある。三菱東京UFJ銀行の店舗では、限定アイテム「MUFGカプセル」を手に入れやすくした。これにアイテムを保管すると、そのアイテムが増える効果がある。これは銀行の利子を模したもの。MUFGブランドを冠したアイテムで銀行口座の利点を疑似体験してもらうことで、ブランドへの親近感の醸成を狙った。

 このアイテムは2015年のゲーム内で最も人気のアイテムに選ばれるほど人気だ。そこで同アイテムを使った販促施策にも乗り出した。9月から、デビットカードの新規申し込み、または月額1万円以上の利用でMUFGカプセルがもらえるキャンペーンを実施。「想定以上に新規顧客を開拓できている」(三菱東京UFJ銀行リテール企画部企画・財務グループの早川徹也次長)という。

 今後は、効果測定にも取り組む。ゲーム利用者への店舗の認知調査や、ブランドとの接触の広告費換算など、複数の手段で効果測定をする。それを検証し、さらなる活用推進を目指す。

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