昨年開幕したバスケットボール男子のBリーグが順調だ。日程の半分強を消化した1月末で、1部に当たるB1の1試合当たり平均入場者数は2711人と昨季から29%増加。入場料収入も、全クラブ平均で昨季から約50%増になった。
野球やサッカーなど国内の他のプロスポーツの多くはチームごと、目的ごとに、顧客データを別々に管理している。その結果、例えばファンクラブ会員が同じチームのEC(電子商取引)サイトでグッズを買っても同一人物と認識できなかったり、チケット購入者が本当に来場しているかが把握できなかったりする。
またリーグの調査によれば、「観戦したいスポーツ」にバスケットボールを挙げる年代別の割合は、10代女性(17.5%)と10代男性(12.8%)が高く、20代男女が続き、40代以上は高くないことが分かった。
LINEなどでチケット送付可能
そこでBリーグは新規発足に当たり、「若年層を中心にファンを増やし、その1人ひとりに働きかけられるように」(Bリーグ理事・事務局長の葦原一正氏)、リーグ全体を統合した顧客データベース構築を目指した。開幕と同時に導入したのが、スマートフォン向けアプリ「Bリーグスマホチケット」だ。
Bリーグを観戦したい消費者は、アプリのダウンロード後、会員登録を済ませ、アプリからB1、B2リーグ全試合のチケットを、座席を選んで買える。購入後のチケットは、コンビニエンスストアなどで紙で発券できるほか、スマホで受け取って入場もできる。しかもスマホで受け取ったチケットを、LINEやメールで同行する相手などに事前に渡すことも可能。好みのチームを指定して選手に関する情報などを受け取れるし、それらを自身のソーシャルメディアなどで拡散することもできる。

開幕当初からアプリの利用を訴えた結果、都市部に本拠を置くチームの多くでは、各試合のチケットの約60%がアプリ経由で購入され、その半数が、実際に入場したかを簡単に確認できる「スマホでチケット受け取り」を選んでいる。アプリを利用するファン向けに関連情報を発信し続けたことで、バスケットボール好きのコアファンが複数の友人を連れて観戦する傾向が強まり、観客増ひいては客単価の増加につながっているようだ。「チケット購入者1人当たりの購買枚数は昨季を確実に上回っている」(葦原氏)という。
今後は、地方に本拠を置くチームのファンにもアプリの利用を促し、2020年までにアプリ経由の購入を全体の80%に引き上げるのが目標。同時に、アプリに配信する情報のパーソナライズでコアファンへの情報発信を強化し、来場頻度と同行者の人数をともに引き上げ、客単価の向上で収益増を目指す。
さらにデータに基づき、リーグが各チームにマーケティングをコンサルティングすることにも注力する。2年後には、今回構築した統合顧客データベースを、「バスケットボールの競技者データベース」とも接続し、バスケットボールに興味を持つ人全体のデータベースを構築。広告主などにデータ活用を促し、収益源に育てていく。