「すごく可愛く描いてくださってありがとうございます」「美化されすぎてて笑った。」「たまくまちゃんが描いてくれたー」──。

 1月下旬以降、こんなコメントとともに、マスクを着用した自分の写真と着けていないイラストが横並びになった投稿が相次いでいる。家庭用マスク「フィッティ」シリーズを製造販売する玉川衛材(東京都千代田区)が現在実施している「フィッティのマスク美人画」キャンペーンだ。

マスク着用写真を送ると素顔イメージをイラストで描いてくれる「フィッティのマスク美人画」キャンペーン
マスク着用写真を送ると素顔イメージをイラストで描いてくれる「フィッティのマスク美人画」キャンペーン

 キャンペーン応募者は、まずマスクを着けた自分の顔写真を用意し、キャンペーンサイトからTwitterアカウントをアプリ連携して写真をアップロードする。すると数日後、マスク着用写真から連想される素顔のオリジナルイラストが写真と横並びで返信されてくる。イラストを描いているのは、宣伝部長を務める同社イメージキャラクターの「たまくまちゃん」という設定だ。

 イラストにはフィッティのロゴマークと、「それはどうかな?」「もう、嬉しいくせに!」「神様に誓える?」などツンデレ系の一言セリフが添えられている。イラストの完成度もさることながら、そのセリフがいかにも元の顔写真の目がそう言っているように感じられるため、受け取った応募者は思わず感想を添えて投稿したくなる。

 同社は花粉症シーズン本番を前に、2014年から3年続けて「フィッティ マスク美人コンテスト」を開催してきた。マスク姿の写真を公募し、Web投票イベントにしたり、お題を提示してそれに見合った写真を審査員が選んだりと、方法はやや異なるものの基本は、作品を集めて“大賞”を選ぶコンテスト形式だった。今回はTwitterアカウント宛てに応募した顔写真と素顔のイラストがメンション付きで送られてくる形のため優劣はつかず、また応募者のフォロワーでも、当該の応募者がキャンペーンに応募していたことは分かりにくい。

 キャンペーンを企画した同社営業部営業推進課主任の小野太一氏は、「コンテストと銘打つと、どうしてもハードルが高く感じられてしまう。ユーザーがもっと気軽に参加できる方法を探したところ、マスク姿の写真をTwitterに投稿する程度ならば抵抗なく、している人も多いと考えた」と説明する。「マスクのキャンペーンなのに、応募者に返すプレゼントが素顔のイラストでよいのか?」という議論もあったという。ただ、写真通りのマスク着用イラストを返しただけではインパクトが薄くなる。少々“盛った”素顔のイメージイラストをプレゼントすることで、「こんなにカワイク、カッコよく描いてくれた(笑)」と、投稿ネタとして引用リツイートを誘発し、フォロワーにフィッティブランドを知ってもらうことを狙った。

 キャンペーンの告知には、都心の電車の吊り革広告などの交通広告のほか、「マイナビウーマン」「モデルプレス」などの女性向けメディアに記事広告を出稿した。サンケイリビング新聞社のWebフリーペーパー「シティリビングWeb」で耳より情報を寄稿しているブロガーが、実際に応募してイラストの出来栄えを気に入ったことからフィッティを話題にするなど、自然発生的なクチコミも起きている。

ブランドを定着させて成長市場でのシェア1位を確実に

 家庭用マスク市場は、新型インフルエンザが流行した2009年に突出した売り上げを記録したものの、翌2010年は対前年比で売り上げが半減するなど、風邪の流行や花粉の飛散量に左右されやすい性質がある。それでも2010年以降は、紫外線対策や素顔隠しの伊達マスクとして使用され始めたこともあり、市場全体は右肩上がりで推移している。その分、競争も激しく、同社はユニ・チャームとトップシェア争いをしている。

 ネット調査サービス「DIMSDRIVE」を運営するインターワイヤード(東京都品川区)が2014年2月に実施したマスクに関する自主調査では、「気に入っているマスクのブランド・シリーズ・商品はありますか」という問いに対し、「ある」と回答した人は僅か2.5%だった。花粉症シーズンだけ購入する人は、ブランドに対するこだわりがあまりないのが実情だ。

 同社のフィッティシリーズは、長時間着用しても耳が痛くなりにくい幅広の耳かけゴムの評判が高い。キャンペーンでたまくまちゃんとともにフィッティブランドを露出し、ファーストチョイスで選ぶ顧客を増やせれば、リピート購入も付いてくるだろう。

 キャンペーンは2月13日から始まる第2弾と合わせて、1000人限定で老若男女参加できる。1月中に応募が300件を超えた。コンテスト形式のキャンペーンで応募数が伸び悩んでいる企業には、参考になりそうな取り組みだ。

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