ライフネット生命保険は1月23日にスマートフォン向け無料通話・メールアプリ「LINE」上に開設した自社アカウントに、チャットbotによる自動応対機能を導入。見積もり件数が導入前と比較して1.5倍になるなど、早くも成果を上げ始めている。2018年3月期中に既存顧客の持つライフネット生命のIDとLINEのアカウントを連携させて、LINEのトーク画面で住所変更や結婚による名字の更新などをできるようにする。

「生命保険もスマートフォンで検討される時代。当社のWebサイトもスマートフォンからのアクセスが過半を占める。スマホファーストの生命保険会社に生まれ変わる必要がある」
ライフネット生命営業本部の向井純太郎お申し込みサポート部長はこう語る。そんな同社にとってスマートフォン対応が遅れていたチャネルの1つが、お客様相談窓口だ。電話での相談窓口を用意していたが、電話をかけて問い合わせをしてくるのは40~50代が中心。「若年層がスマートフォンで気軽に相談できる窓口を設ける必要があった」(向井氏)。着目したのがLINEだ。
従来のLINEは、「友だち」を集めて一斉にメッセージを配信する、いわば広告宣伝手法としての使われ方が一般的だった。ライフネット生命も活用を検討したことはあったが、利用料金が高額で「費用対効果が合わない」(営業本部お申し込みサポート部ウェブグループの森根光春氏)ことから見送っていた。それが、LINEと企業の既存のシステムとをつなぐ「LINEビジネスコネクト」の登場で潮目が変わった。高額な「LINE公式アカウント」を使わなくても、自社の目的に合わせてLINEを活用できるようになったからだ。
LINEは相談の8割が20~30代
ライフネット生命はLINEを、あくまで見込み客が保険について相談したい時の受け皿として活用する。積極的に友だちを集めるようなことはしない。2016年7月に自社アカウントを開設して、LINEビジネスコネクトを使ってお客様相談窓口と接続した。最初のフェーズは完全な有人対応から始めた。そもそもLINE経由で保険の相談が寄せられるか予測がつかなかったことと、チャット対応の経験を積むためだ。保険の見積もり結果画面などに問い合わせ先として、電話とLINEを併記して案内した。その結果、「LINE経由の問い合わせの8割を20~30代が占める」(森根氏)など、当初の目論見通り、若年層の相談の増加につながった。
そこで、次の段階として今年1月、チャットbotの導入に踏み切った。保険の相談を受けるうえでは、「保険加入の有無」「年齢」「結婚の有無」といった情報が最低限必要になる。こうした基礎情報については、チャットbotで自動応対した方が効率化につながる。具体的には、チャットbotで「ほけん相談」を始めると、まずは「保険加入の有無」を聞かれる。こうした質問に「はい」か「いいえ」で回答していくことで、保険料の見積もりが算出される。機械的な対応にすることで利用者側の相談のハードルを下げる。さらにこの後、有人の相談窓口への相談を希望する場合、回答した情報はすべて、担当者側に共有される。そのため、相談窓口ではすぐに具体的な内容へと入れる。これにより、対応の効率化が図れる。
チャットbotの導入に合わせて、「Facebook Messenger」にも対応した。また、昨年7月からLINEでチャットによる問い合わせ対応の経験を積んだことから、一度は停止したWebサイト版のチャット機能も昨年12月に再開した。こうして、中期経営計画で掲げる「すべてのチャネルにおいて、独自の顧客価値を継続的に創出」する戦略を推進し、スマホ利用の利便性が高いサービスの提供を目指す。
ライフネット生命のIDとLINEのアカウントを連携する時期は、2018年3月期でした。お詫びして該当箇所を修正します。[2017/2/8 12:20]