2月14日に向けて、菓子メーカーによる「バレンタイン商戦」が本格化している。今年初のブランド横断型のSNSキャンペーンを展開して、新たな需要を開拓しようとしているのが森永製菓だ。狙うのは、性別に関係なく友人間でチョコレートを渡す「友チョコ」需要の拡大だ。
若年層の間では、この友チョコ文化が広がっている。さらに、昨年のバレンタインデーは休日だったが、今年は平日だ。そのため、「学校や職場での友チョコ需要が昨年以上に高まるのではないかと考えた」(森永製菓営業本部営業戦略部リテールサポートグループSP担当の嶋貫侑希子主任)。
また、友チョコに関する調査からは、プレゼントの多くが手作りチョコレートであることも分かった。手作りで小さなチョコレートをたくさん作り、それを1つずつ包んで多くの友人に配る。そんな風にバレンタインデーを楽しんでいる様子がうかがえる。そこで今回のキャンペーンは、チョコレートブランド「DARS」に手作りのホットケーキ用素材「ホットケーキミックス」と「純ココア」を加えた、3ブランド横断型で実施して、これらの商品を組み合わせた手作りチョコレートを訴求することにした。
というのも、例年は3つのブランドごとにキャンペーンを展開するものの、「DARS以外のブランドは若年層の間で認知が低く、接点を持ちづらい」(嶋貫氏)という課題を抱えていたからだ。手作りチョコレートを軸に、関係性が希薄だった若年層との接点拡大を狙う。
インフルエンサーを通じて情報拡散
「友チョコ」と「手作りチョコレート」。この2つの軸で若年層に訴求するために森永製菓が実施しているのが、SNS上で人気を集めるインフルエンサーを起用した動画投稿キャンペーンだ。投稿してもらう動画は「ダンス動画」と「チョコレートの作成動画」の2つである。

キャンペーンは、インフルエンサーを活用したマーケティング支援のVAZ(東京都渋谷区)が運営するSNS「PROF」上で実施している。PROFは投稿した動画や写真が3時間で消えるSNS。投稿に対して評価が付き、その評価の高さに応じて掲載期間が延長されるという特徴を持つ。既に35万人超が利用者登録しており、そのほとんどが若年層だ。森永製菓のターゲット層と合致した。
募集する動画のうち、ダンス動画は「友チョコ」というキーワードを浸透させるのが狙い。昨年、星野源さんの「恋」の振り付けが「恋ダンス」と呼ばれて人気を集めたり、ピコ太郎さんの「PPAP」が世界的なブームになったりしたのは記憶に新しい。動画投稿サイトには、それらのダンスを消費者が「踊ってみた動画」が数多く投稿されている。
こうしたブームに目をつけて、「友チョコ方程式」という曲を作り、それに合わせてダンスを振り付けた。曲は友チョコ方程式と繰り返し歌うことで、キーワードが耳に残る内容を目指した。また、動画投稿の火付け役として、双子の人気インフルエンサーのりかりこさんなどに踊ってもらった動画を公開した。
人気の高いインフルエンサーは、一般的にはあまり知られていないが、若年層の間では有名タレントに引けを取らないほどの影響力を持つ。また、短尺の動画で人気を集めていることもあり、ダンス動画との相性が良い。彼らのファンに動画を見てもらうことで、動画投稿の欲求を喚起する。インフルエンサーには森永製菓の商品を使ったチョコレートの制作にも取り組んでもらい、動画として森永製菓のYouTubeなどで発信している。
キャンペーン開始から1週間で、Twitter上にはハッシュタグ「#友チョコ方程式」の付いたツイートが2000近くツイートされるなど認知が広がりつつある。キャンペーン終了の2月14日までにダンス動画を1000投稿集めることで、認知拡大につなげる。