中堅調剤薬局チェーンのアイセイ薬局は昨年11月から全国309店舗(2016年1月29日時点)に設置したデジタルサイネージの活用を本格的に始めた。同社が提供している「薬剤師(自宅)派遣サービス」や健康対策情報などを訴求するオリジナルの動画を作成し、店頭で流している。1月4日からは「花粉症対策」キャンペーンと銘打って、早めの対策を訴える動画も加えた。
今のところ全店で同一の内容を流しているが、2016年中には近くの病院の診療科目に応じて、動画を出し分ける計画だ。

アイセイ薬局がデジタルサイネージを活用した施策に取り組むきっかけになったのは、2年半前。約100人の利用者を対象に、店舗に設置していたディスプレイでテレビ番組を流した場合と、健康関連情報を流した場合とで、興味関心の違いを調べたことである。その結果、テレビ番組はほとんど見られていなかった一方で、健康関連情報については60%の人が興味関心を示したという。
薬局を訪れるのは、当然ながら「心身の調子が良くないために、病院で診察を受けた人たち」(マーケティング本部コーポレート・コミュニケーション部部長/クリエイティブ・ディレクターの岩崎朋幸氏)である。だからこそ調剤が終わるのを待つ間に健康関連情報を流せば、強い関心を持って見てくれるわけだ。
この実験を機にアイセイ薬局はデジタルサイネージの活用に向けて準備を進めてきた。従来は、薬剤師が口頭で説明していたサービスなどを動画にすることで、待ち時間の短縮にもつながる。また、「健康管理を積極的にサポートしている薬局というイメージを打ち出し、競合薬局との差異化にもなる」(岩崎氏)ことを期待している。
コンテンツと広告を組み合わせた約20分のロールを放映
アイセイ薬局の利用者の平均待ち時間は約20分であるため、3分の動画を組み合わせて約20分のロールを作り、デジタルサイネージで流している。
動画では、処方されるクスリの種類が多い場合に、飲み間違えるリスクを防ぐために朝、昼、晩などに飲む複数のクスリを1つにまとめる「一本化調剤」や、高齢者などの自宅に、薬剤師がクスリを届けてくれる「薬剤師(自宅)派遣サービス」などを紹介している。また、アイセイ薬局が開発した電子お薬手帳アプリ「おクスリPASS」を訴求する動画も流している。
既に動画を見た利用者が一本化調剤や薬剤師派遣サービスなどを利用することが増え、一部店舗では来店客の増加にもつながっているという。
今後は広告メディアとしても活用していく方針だ。既に製薬メーカーなどに働きかけており、今年5月頃から本格的な広告出稿が始まり、2016年度中には事業として黒字化を見込んでいるという。岩崎氏は、「長期的にはデジタルサイネージで広告した商品を店頭販売したり、お薬手帳アプリを使ったワン・トゥ・ワン・マーケティングにも取り組んだりしていきたい」と展望を語る。