ソーシャルメディアマーケティング支援のサイバー・バズは2018年2月1日から東京大学と共同で、「Instagram」に写真を投稿する際、より高いエンゲージメント率の獲得につながるハッシュタグを人工知能(AI)が推奨する技術の実証実験を始める。将来的には同技術の商用化を目指す。「企業のSNS運用はノウハウが属人的になっている。AIでサポートできる仕組みを作ることで、運用の負荷を減らしたい」と、サイバー・バズ執行役員CTO(最高技術責任者)の金森紘氏は開発背景を説明する。

 AIには東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻の山崎俊彦准教授が開発したアルゴリズムをそのまま採用する。山崎氏は過去に写真投稿型SNS「Flickr」に投稿された約6万枚の画像と、それに付与されたハッシュタグをAIに学習させた。その学習結果を用いて、約2000枚の画像に対してAIが推奨したタグを追加して投稿する実験を実施。AIを用いずにタグを付けた場合と比較して、約2倍の閲覧数を獲得した。このアルゴリズムを用いる。

新たな技術を使うとInstagramの投稿につけるべきハッシュタグをAIが推奨してくれる
新たな技術を使うとInstagramの投稿につけるべきハッシュタグをAIが推奨してくれる

 一方、サイバー・バズはAIを学習させるためのデータを用意した。これまで実施してきた、Instagramを活用したマーケティング支援に関わるデータを保有するほか、「Instagramからシステム的にデータを取得する権限を持っている」(金森氏)。これにより850万件を超える投稿、ハッシュタグ、Instagramの利用者データなどをAIに学習させた。

関連度合いなどでランキング化

 技術を利用する場合、まず投稿する写真に付けるハッシュタグを指定する。すると、そのハッシュタグとの関連度合いや、そのハッシュタグが付いた投稿の「いいね!」数などで、AIが関連性の高いハッシュタグをスコアリングする。「複数のハッシュタグを指定した場合、ハッシュタグごとの影響度なども加味してスコアリングされる」(金森氏)仕組みだ。スコアによって、関連するハッシュタグがランキング化されて表示されるため、ランクの高いタグの中から、高い効果が期待されるタグを人が選んで付与して投稿する。

 実証実験では、実験用のInstagramのアカウントを開設して、AIの活用の有無によってエンゲージメント率に変化が表れるかどうかを分析する。具体的にはすでに投稿されている写真とまったく同じ文章を用いながら、ハッシュタグだけをAIが推奨したものに変えて実験用のアカウントで再投稿して比較する。ただし、フォロワー数によって反応率が変わるため、比較には「いいね!」数をフォロワー数で割ったエンゲージメント率を用いる。

 また、既存事業への活用も試験的に始める。Instagramのアカウント運用を請け負う一部の顧客企業の投稿に、AIが勧めたハッシュタグを付与して投稿するなどして、エンゲージメント率の向上に寄与するかどうかを分析する。

 こうして実証実験を実施しながら、精度を高めるためにデータ取得を加速させる。その1つとして、サイバー・バズは今春、この技術を一般の消費者も利用できるようにする。利用者は投稿する前にこの技術を使って調べることで、より多くのいいね!を集められるハッシュタグが見つかる。こうした利用データもAIの学習データとして蓄積。「今後、毎月およそ1000万件のデータを継続的に学習させていく」(金森氏)ことでハッシュタグを推奨する精度の向上を目指す方針だ。