中堅眼鏡小売りチェーンのビジョンメガネ(大阪府守口市)が、店舗内の顧客の動きをデータ化して、商品陳列や見込み客へのダイレクトメール(DM)の配信などに生かす、データドリブンマーケティングを2015年11月から始めた。

 まずは大型ショッピングセンター内に出店する「アリオ亀有店」を実験店と位置付け、顧客の動きを温度変化で判別するヒートマップ用カメラ4台と、撮影画像から顧客の年齢と性別を自動で推定する年齢認証用カメラ3台をそれぞれ配置。店内の顧客の動きを撮影している。

 カメラで撮影した2種類の映像を解析することで、客層を分析し、顧客の店内での動きの把握を目指す。具体的には、何歳ぐらいの男性または女性の客が、店内のどの棚を、どのくらいの時間をかけながら、どのように見て回り、実際にどんな商品を手に取ったのか、などを数値としてデータ化しようとしている。

ヒートマップ用カメラで撮影した店内の模様。顧客が前傾姿勢で商品を見ている
ヒートマップ用カメラで撮影した店内の模様。顧客が前傾姿勢で商品を見ている

 元々、眼鏡小売店は、商品を購入した人のカルテを作成するため、顧客データを保有している。ビジョンメガネでも、「商品を購入した顧客に対し、一定期間後に、メンテナンスを呼びかけるメールや、新製品の発売を知らせるメールなどは既に送っている」(営業本部情報管理課の下川貴広課長)という。

 しかし、入店しても商品を購入しなかった顧客の動向は把握できていなかった。「潜在顧客がどんな商品に興味を持っているのか、データで把握したいと考えたのがそもそもの始まり」と下川氏。そこで画像解析技術などを持つマーケティング支援会社ABEJA(東京都港区)のソリューション「ABEJA Dashboard(アベジャ・ダッシュボード)」を採用した。

潜在需要の掘り起こしを期待

 アリオ亀有店では、今後、顧客の購買履歴なども勘案して、以下のような取り組みを進める予定だ。

 「値引きセール実施後、その効果がどれだけ続くかを、店内の顧客の動きから判定」「POPを3パターン用意し、1週間ずつパターンや置き場所を変えて、来店客に最も効果が高そうなPOPとその置き場所を探す」「新商品の発売時、どのような属性の客が興味を示すかを把握したうえで、告知メールの配信先の選定に役立てる」……。下川氏は、「ビジョンメガネに興味を持つ顧客の潜在需要を掘り起こしたい」と長期的な狙いを語る。

 取り組みは始まったばかりで、売り上げ増などの具体的成果はまだ上がっていない。ABEJAの営業本部兼事業開発本部マネージャーの書上拓郎氏は、「一般的にアベジャ・ダッシュボードを導入いただくと、買い上げ率(来店客に占める購入客の割合)が2%ほど向上する」と言う。ビジョンメガネでは最低1年間、この取り組みを続け、今夏をメドに具体的な成果を上げ、他のリアル店舗でも成果が見込める場合は、展開していく考えだ。

■修正履歴
記事掲載当初、取り組みの開始時期を2016年11月としていましたが正しくは2015年11月です。お詫びして訂正いたします。[2016/1/19 14:50]
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