理化学機器の卸大手であるアズワンは、ネット事業の売上高を2020年3月期に100億円まで高める目標を掲げる。ネット戦略の中核を担うのが、EC(電子商取引)サイト「AXELショップ」だ。2016年は、同社の販路である代理店からの受注や大口取引先である企業からの受注の窓口をAXELショップへ順次、切り替えて売り上げを増加させた。2017年3月期の売上高は想定通り、前年同期比で約20%増となる「60億円超で着地しそうだ」とeコマース推進部の丸橋正孝部長は言う。

 2017年にはBtoC(消費者向け)事業への参入を標榜する。これまでアズワンの主要顧客は、研究機関や企業の研究所などだった。AXELショップで扱う商品には一部、消費者の直接購買が期待できる商品もあるため、クレジットカード決済を導入して、一般消費者の注文にも対応できるようにする。また、AXELショップの英語対応も進めている。海外の代理店からの受注の窓口も、一本化する計画だ。

アズワンはネット事業の売上高を伸ばし、2020年度に100億円達成を目指す
アズワンはネット事業の売上高を伸ばし、2020年度に100億円達成を目指す

 アズワンは2015年12月にAXELショップを開設した。それまでは顧客企業や代理店に配布するカタログが主な販路だった。カタログには売れ筋を中心に約8万点もの商品を掲載していたものの、「カタログ外の商品を購入したいという要望が山のように寄せられていた」(丸橋氏)。また、大手EC事業者など理化学製品を取り扱う事業者が増え、これまで競合ではなかった企業も競合になり得る可能性も出てきた。

 そこで、Webサイトの特性や2000社の仕入れ先を持つ強みを生かし、圧倒的な商品数を持つECサイトを構築し、既存顧客との関係をより強固にすることを目指した。ECサイトの開設に当たって1つの目安としたのが商品数100万点だ。仕入れ先に狙いを説明してあらゆる商品データを提供してもらった。現在は130万点を超える商品を取り扱っている。

業界特化ならではの検索性を重視

 サイト構築に当たっては、この膨大な商品の中から、顧客がいかに目的の商品を探しやすくするかという点にこだわった。例えば、ビーカーのような容器なら形や容量などさまざまな切り口で検索される。ところが、温度計となると今度は対応温度など全く異なる条件で検索される。こうした検索に対応するため、すべてのカタログ掲載商品に、順番に絞り込みに必要なタグ付けをしていった。理化学製品のうち研究用機器は、既に8割超が対応を完了している。「理化学製品をこれほど集められる仕入れ先の豊富さ。そして、それを探しやすくする知見を併せ持つ業界特化の当社だからこそ実現できる優位性だ」(経営企画部の臼井孝之部長)。

 こうして開設したECサイトは、既存の販路の強化に生かしている。例えば、取引先の代理店にパスワードとIDを発行する。その代理店がこのパスワードとIDを自社の顧客に配布して、必要な商品をAXELショップで注文してもらう。商品は直送するが請求は代理店が行う。こうすることで、従来の商流を踏襲しながらカタログ外の商品を販売できる。

 また、ECサイトは、参入を決めたBtoC事業における新規顧客の開拓にもつながっている。例えば、「保育園や、意外なところで牧場などから注文が寄せられている」(上田俊明Web企画グループ長)。また、介護用品などは一般消費者からの購買も期待できる。

 既存顧客への売り上げ増とBtoC事業参入で2020年3月期に100億円の売り上げ達成を目指す。

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