楽天生命保険は2017年中にコールセンターのチャットシステムとWeb接客ツールとを連携し、サイト訪問者に対してコールセンター側から能動的に問いかけられるシステムの構築を目指す。商品選びや申し込みの手順などで迷っていると推察される訪問者に能動的に手を差し伸べることで、申し込み比率の向上につなげていく。既にWeb接客ツールの導入で、Webサイトのコンバージョン率(CVR)が5.3倍に増加するなどの手応えを得ている。コールセンターとの連携強化で、さらなる効果向上を狙う。

データに基づき商品をポップアップ表示
データに基づき商品をポップアップ表示

 楽天生命がチャットに力を入れる背景には、「生命保険のネット販売には、サイトに人の気配を感じてもらうことが重要になる」(経営企画部広報担当の眞利子聖乃氏)という考えがある。同社は2013年にアイリオ生命保険を楽天が子会社化し、商号変更で産声をあげた。楽天グループの顧客基盤を生かし、ネット販売を開始したが、目論見通りにはいかなかった。「当初は商品力だけで売れると楽観していたが、思っていたほどは売れなかった」(眞利子氏)。

 生命保険を価格や、ネットで申し込みが完結する利便性だけで選ぶ人は少ないだろう。本当にサポートをしてもらえるのかという不安を払拭しなければ、加入にはつながりにくい。対面販売では販売員が顧客に最適な商品を紹介する。このような安心感を与える上で、サイト上でもパーソナライズされた情報を提供するなど、個々に合わせた提案が求められると考えた。

3つのパターンで情報を出し分け

 そこで導入したのが、プレイド(東京都品川区)のWeb接客ツール「KARTE」だ。データに基づいて適切な情報を訪問者ごとにポップアップで出し分けたり、チャットによる相談を呼びかけたりできる。楽天生命はこのKARTEを使い、3つのパターンで情報を出し分けている。

 1つ目は楽天グループの所有する顧客データを活用する方法だ。活用の同意を得ている顧客データや、楽天生命が独自に取得したアンケートデータに基づき、性別や年齢、家族構成などから、女性向け医療保険「楽天生命レディ」、長期入院に対応した「楽天生命ロング」など、全6商品の中から適切な商品を訪問者にポップアップで告知する。

 次に申し込みの再開を促すもの。楽天生命のWebサイトでは申し込みの途中で入力した情報を保存できる。「複数社を検討する中で、申し込み途中で離脱したり、再訪問したりする人は多い」(ネット企画編成部の小林俊貴リーダー)。そこで、再訪問時にポップアップで申し込みの再開を促し、成約につなげている。3つ目は、顧客データがなく、再訪問でもない訪問者に、売り出し中の商品を告知していること。こうした情報の出し分けでCVRが5.3倍に高まった。

 2017年はKARTEの活用をさらに高度化させる。管理画面が別になっているコールセンターのチャットシステムとKARTEを連動させる。KARTEの管理画面に、訪問者のデータをリアルタイムに表示。このデータをコールセンターのチャットシステムに取り込み、申し込みに近しい人をリスト化して呼びかけるといった仕組みの構築を目指す。より人の気配を感じるサイトにすることで、訪問者に安心感を与え、CVRのさらなる向上を目指す。

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