「チャケバガスッテセイカイオニエモインダケド」。レストラン店内で食事を終えた2人のギャルが、普通の人には分からない会話を始めるYouTube動画が再生回数50万回を超え、話題を呼んだ。すかいらーくグループの「ガスト」が、通常のファミリーレストランの殻を破るものにしようと制作・配信したものである。

ガストが2016年9月に制作・配信したネット動画「『今日、ガスる?』~ギャル語の食レポが鬼レベチ、神ってる~」の一場面(上)。ギャル語バージョンの成功を受けて制作・配信した第2弾(下)

 画面上にはギャルの会話と同時に言葉の解説が次々に文字で示される。それによれば、冒頭のセリフは「ちゃけば(ぶっちゃけ)ガスって(ガスト来て)正解、鬼(すごく)エモい(感動した)んだけど」という意味になる。その後もギャル語の会話で、ガストの季節限定メニュー「オニオンリングハンバーグ(オニバーグ)」の魅力を訴えている。

10~30代前半の若年層を狙う

 これまでガストは、メニューがおいしそうに見えるシズル感を重視した動画をテレビCMで放送。同じ動画をネット広告でも活用してきた。しかし、「このやり方では来店して欲しい10~30代前半の若年層に刺さりにくい」(すかいらーくマーケティング本部デジタルマーケティンググループの小林克明ディレクター)。

 そこで2016年9月、10~30代前半の女性を狙ってオニバーグの魅力を訴えるネット動画を制作する際、そのテイストを思い切って変えた。映像制作支援会社Viibar(東京都品川区)の協力を得て、冒頭のギャル語バージョンと従来通りにシズル感あふれるバージョンの2種類を制作。9月上旬から中旬にYouTubeにアップしたほか、ネット動画広告として配信し、視聴者の反応を確かめたのだ。具体的には、広告配信後に、広告を見た人と見ていない人を抽出し、その後の態度変容を調査した。

 その結果、ギャル語バージョンのほうが視聴者の反応が良かった。シズル感あふれるバージョンは、見た人の反応に従来と差がなかったのに対し、ギャル語バージョンは、「ネット広告を見た後に『ガスト』を検索する人が約2倍、『メニュー(今回はオニバーグ)』を検索する人が約30倍に達した」(小林氏)という。「来店を促せたとまでは明言できない」(小林氏)が、動画のテイストを若年層向けに一新した効果は大きかったようだ。

 宴会前にガストに立ち寄る“0次会”というキーワードの訴求も考えていたガストは、2人のビジネスパーソンが店内でトレンドワードを駆使し、0次会について会話するネット動画も制作。12月初旬にYouTubeに公開し、ネット広告として配信した。こちらも若年層を中心に視聴が増えたと見られ、再生回数は約30万回に達し、「一定の効果を得られた」(小林氏)という。

 今後はネット動画広告に加え、動画を使わないネット広告やスマートフォン向けアプリ、メールマガジンといったデジタルツールを、試行錯誤を重ねつつ複合的に活用し、ユーザー1人ひとりへのマーケティングを強化して、若年層中心にリアル店舗への来店を促す。

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