「イヴ・サンローラン」や「ランコム」「メイベリン」といった化粧品ブランドを多数抱える日本ロレアル(東京都新宿区)が2017年冬から、顧客情報を分析してブランドごとに有力な購買層に働きかける顧客志向マーケティングに力を入れている。

日本ロレアルは「イヴ・サンローラン」(写真上)や「ケラスターゼ」(下)など20以上の化粧品ブランドを傘下に持つ
日本ロレアルは「イヴ・サンローラン」(写真上)や「ケラスターゼ」(下)など20以上の化粧品ブランドを傘下に持つ

 日本ロレアルが活用するのは、購買行動の速さと購買の動機に着目して顧客をセグメントして捉えるシステム「Japan-VALS(JVALS)」をカスタマイズしたシステム。

 ある顧客が商品を早く買う傾向にあるか、普及するまで待つ傾向にあるか。伝統モラルに沿うことを重視するか、社会的な達成感を重視するか、自己表現を重視するかという2つの軸を設定。そのうえで、情報収集に活用する媒体や色彩への関心度といったライフスタイルや嗜好に関する細かな項目をアンケート調査やデータで調べ、顧客を7つのグループにセグメントし、傘下の各ブランドごとに相性のよいグループを特定する。そのグループが好むチャネルやメディアを使って購買を働きかけたり、データと比べて実際の購買客が少ないと思われるグループがあれば、そのグループに働きかけたりする。

 傘下の高級メーキャップブランド「ジョルジオ・アルマーニ・ビューティ」は従来、ファッションの感度が高い30~40歳代の論理的な女性が主な購買層だった。しかし、JVALSを活用した分析では、美容の感度が高い20~30歳代の女性でも、ソーシャルメディアの利用頻度が高い人は、カラフルな化粧品を好む傾向があると分かった。そこでアルマーニは今後、ソーシャルメディアを使った情報発信に力を入れ、若年層がよく利用するネット通販や店頭でも、カラフルな口紅やファンデーションの品ぞろえを強化する方針だ。

2014年からデータを蓄積して分析

 日本ロレアルがJVALSを導入したのは2009年頃。当時は傘下のブランドがテレビCMなどのマスマーケティングを中心に展開しており、JVALSを活用し切れていなかった。

 しかし、2013年頃から顧客ニーズが多様化した結果、同年秋に経営戦略・マーケティング開発本部(CSMD)を設置。「分析精度を高めるため、2014年からデータの蓄積に力を入れ始めた」(向山東文子副社長チーフ マーケティング オフィサー)。各ブランドが消費者調査をする際にJVALSの質問を織り込んだり、調査会社インテージが活用する消費者パネルへの質問にJVALSの質問を組み込んでもらったりした。

 そうしてデータを蓄積し、顧客分析の精度を引き上げ、「このブランドの顧客と相性が良いグループには、このチャネルの利用者が多いといったことが2017年半ばから分かってきた」(CSMDの前田ジェームス シニアコンシューマー&マーケット インテリジェンス マネージャー)。

 日本ロレアルでは今後、JVALSのデータを活用して、各ブランドがこれまで逃がしてきた顧客層の取り込みを目指す。

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