

「なんかこう…燃えるようにかゆいっていうか」「とにかくじっとしてらんなくて」──。2017年5月、若い女性がこんなセリフを発するWeb漫画「ひとりで、できる。」が、公開されるや多くのアクセスを集めた。
これは佐藤製薬が販売する腟カンジダ再発治療薬「エンペシドL」のブランドサイトで掲載したものだ。初回は医師の診断と処方が必要だが、再発の治療については2011年に再発治療薬がOTC医薬品として発売が認められた。2017年から、医療用医薬品「エンペシド膣錠」の開発元であるバイエル薬品(大阪市北区)がエンペシドLのブランドマーケティングを担当することになり、取り組んだのが上記Web漫画だった。
「膣カンジダは女性の5人に1人が経験者と言われるポピュラーな疾患だが、性病と誤解している人も多く、親しい友人でもなかなか聞きづらい。正しい情報を分かりやすく伝えて理解してもらうための方法として、コミックがふさわしいと考えた」。エンペシドLのブランドマーケティングを担当するバイエル薬品コンシューマーヘルス部門OTCブランドマネジャーの栗原宏枝氏は、Web漫画施策の狙いをこう語る。
漫画×検索1位で正しく啓蒙
2016年秋にDeNAが運営していた医療・健康情報サイト「WELQ」で、誤った対処法やエビデンスに乏しい記事が多く見つかり、閉鎖するトラブルがあった。だがこの手の情報サイトはWELQだけでなく、問題は解決していない。膣カンジダについても、事実誤認や誤解を招く表現、大仰に不安を煽る内容が散見される。中には健康食品の購入へ誘導するものもあるという。
Web漫画の書き手には、『結婚相手ってどこに落ちてるの?』などの作品で女性の心理描写に定評があり、女性読者から支持を得ている漫画家の花津ハナヨ氏を起用した。同じ職場で働く20~40代の女性社員3人がそれぞれ主人公となる3話構成。仕事と、プライベート、家庭がともに多忙なときに限って再発するなど、経験者の共感を呼ぶシーンを描きながら、性病ではないこと、市販の再発治療薬があることなどを啓蒙する内容に仕上がっている。
またQ&Aコーナーを充実させて、疾患に関連するワードを盛り込んだことで、エンペシドLのブランドサイトは「膣カンジダ」検索で1位表示になり、正しい情報への誘導という目的を実現した。
店舗検索ページでは、薬剤師のいる薬局・ドラッグストアをGoogleマップに表示し、ネット購入できるECサイトも案内している。漫画ページにアクセスした読者の大半が最後まで読了し、店舗検索ページへの流入も増えているため、Web漫画が疾患の啓蒙のみならず購入も後押ししたと言えそうだ。