アサヒビールが昨年3月に運営を開始した会員サイト「アサヒパーク」が、消費者の支持を集めている。会員数は約50万人で、その利用者は、同社のさまざまなブランドサイトを閲覧するため、1人当たりのPV(ページビュー)が非会員と比較して約5倍も高い。

また、日経BPコンサルティングが3万人超のネット利用者を対象としたアンケート調査などを基に、企業のサイトのブランド力を算出する「Webブランド調査2015-秋冬」において、開設から1年も経たずして、12位に食い込んだ。
アサヒパークはお酒に関するエンターテインメントサイトという位置付け。会員登録して、サイト上の動画やクイズなどのコンテンツを利用すると、ポイント「うまい!GOLD」がたまる。ためたポイントを利用し、プレゼントキャンペーンなどに応募できる。そうしたコンテンツを楽しみ回遊してもらいながら、一方で新商品や「スーパードライ」限定パッケージなどの商品情報に誘導するなどさまざまなブランドや商品の情報に触れてもらうことを目指している。
こうしたサイトを開設した背景について、アサヒパークの運営を手掛けるマーケティング本部デジタルマーケティング部の枝川高副課長はこう説明する。「当社はブランドごとの発信力が強い半面、ブランド間に横串を刺すようなコミュニケーションでは課題を感じていた」。従来は、宣伝部が主体となってテレビCMなどを展開するものの、キャンペーンの間をつなぐ施策が十分ではなかった。そこで、「キャンペーンとキャンペーンの間をつなぐコミュニケーションをする“場”」(枝川氏)として、アサヒパークを開設した。
会員獲得にリタゲ広告も活用
こうしたサイトを運営する場合、多くの企業が会員獲得という壁にまず当たる。アサヒビールでは、会員獲得のためにリターゲティング広告も活用している。「アサヒビールの情報に関心ある人を集めるうえで、一度でもアサヒビールのサイトを訪れた人は、重要な見込み会員と言える」(枝川氏)。そこで、過去にアサヒビールのサイトを訪れた人を対象に、アサヒパークを案内する広告を配信し、効率的な会員獲得を目指している。その結果、約50万人が既に登録した。これを2016年には2倍の100万人まで拡大することを目指す。
またアサヒパークからブランドサイトなどへ導いた場合、その後の回遊率が非常に高い傾向が出ている。冒頭で紹介した、1人当たりのPVが非会員と比較して5倍という数値はその表れだ。「やみくもに会員を集めるのではなく、アサヒビールの商品に関心を持つ人をきちんと集められている」ことが要因と枝川氏は見る。
今後、取り組みを強化するのは効果測定と来訪頻度の向上だ。現状はサイトの回遊率などが主な指標だが、「本来はLTV(顧客生涯価値)の向上が目的」(枝川氏)。そこで外部企業と連携し、会員データと購買データを突き合わせた分析も始めているという。また来訪頻度の向上では、既存会員を対象としたリタゲ広告の活用も視野に入れる。