「Revストレッチを始めましょう。足を肩幅に開いてください」──。朝8時40分、静岡県磐田市のヤマハ発動機のオフィスでは、始業5分前になると軽快な音楽とともにこんなナレーションが流れる。2015年10月から導入した始業前体操「Revストレッチ」だ。同社のグローバルブランドスローガン「Revs your Heart」の従業員への浸透を目指す社内広報の取り組みで、この動画をYouTubeでも公開することで、同時に対外的な企業ブランディングも狙っている。
同社コーポレートコミュニケーション部ブランド推進グループの倉辺祐子氏は、「“Rev”には、エンジンの回転を上げる、わくわくさせるといった意味がある。『感動創造企業』を標榜する企業として、お客様にわくわく感を提供していくには、まず従業員が生き生きしていること。それを伝えていくことが大事」とストレッチ開発の意義を説明する。
Revストレッチは職場で実施することを前提に、従業員の悩みとして多い腰痛や肩こりの予防に役立つ動きを取り入れた。途中、手と腕の部位の運動では、膝を軽く曲げ、両腕を前方に突き出し、拳を強く握りしめて手首を下にひねる。まさにバイクに跨がる動作で、要所にバイクのエンジン音も採用しているため、次第に気分が上がっていく。
オールヤマハの力を結集して制作
制作にあたっては、出資先であるジュビロ磐田のフィジカルコーチに体の動きを、ヤマハミュージックパブリッシングの専属作曲家に音楽をそれぞれ依頼し、“オールヤマハ”の布陣で作り上げた。
始業前体操は以前から存在したが実施率は低下傾向にあり、そろって取り組んでいたのは工場など一部に限られていた。それがRevストレッチ導入1カ後の社内調査では、「参加率8割以上の部署が、導入前の39%から53%へと過半数に達した」(倉辺氏)。2016年に入っても継続しており、新ストレッチは定着したようだ。


Revストレッチを誰でも利用できるよう、同社はYouTubeチャンネルにお手本ムービーを公開したほか、動作を図解したPDFや楽曲ファイルをダウンロードできるようにした。ファン数1万人あまりのFacebookページで紹介した際にはシェア数が20件を超え、「バイク乗る前にちょうどいい」などライダーから好意的な声が上がっている。
昨年暮れのクリスマスには、一般への話題喚起を目指して無料のブラウザーゲーム「Revパズル」をリリースした。新ストレッチ導入、社内調査公表、ゲーム公開と、昨年10~12月の3カ月でRevストレッチ関連だけで3本のリリースを配信し、そのたびにニュース記事になり、メディア露出に成功している。
ヤマハ発動機といえば、ラグビーW杯で大活躍した五郎丸歩選手が所属するヤマハ発動機ジュビロの運営企業。ジュビロ磐田も3年ぶりにサッカーJ1昇格を果たし、磐田の地に注目が集まっている。始業5分前の“ルーティーン”であるRevストレッチを社外にも訴求することを通じて、ステークホルダーに対し企業イメージの向上を図る考えだ。