Twitterを活用して、消費者と共に1つの物語を作り上げる。ELGC(東京都千代田区)が展開する化粧品ブランド「クリニーク」は、クリスマス商戦を盛り上げるために、そんなキャンペーンを実施した。物語が進行する度に、フォロワーに選択式のアンケートを取り、最も多かった選択肢を物語に取り入れていく消費者参加型の企画である。消費者を巻き込むことで、ブランドをより身近に感じてもらうことを狙った。

クリニークが実施したキャンペーン「#ドキドキ140字ストーリー」は、ツイート上で進行する“恋愛ドラマ”。クリニークのTwitter公式アカウントで、2015年11月26日〜12月11日にかけて、全10話の物語を2日ごとに、ツイートしていった。
物語を進行するうえで、昨年10月にTwitterに新たに加わった投票機能をいち早く活用することで、フォロワーへ参加を促した。この機能は、最大4つまで選択肢を作って、フォロワーに質問を投げかけて回答を集められるもの。回答結果はフォロワーもTwitter上で確認できる。
クリニークはツイートごとに、主人公のセリフや、その時の気分で使いたい化粧品の種類などをフォロワーに尋ねていく。例えば、「クリスマスの予定を聞くなら、きっと今しかないよね?どうやって?」「ちょっといつもと差をつけるなら何する?」といった質問を投げかけていった。
商品を自然想起させる選択肢作り
質問はいずれも、物語の進行を大きく左右するような内容ではなく、あくまでセリフの言い回しであったり、気分にあったメークを尋ねるものに過ぎない。だが、自分の気持ちを投票してもらうことで、物語への感情移入を誘い、結果的にブランドに対して情緒的な価値を感じてもらうことを狙った。
「化粧をすることで、女性は気持ちが盛り上がる。物語の進行に合わせて、そうした気持ちを一緒に共有することは、ブランドに対する好意度の向上が得られると考えた」(ELGCクリニーク事業部マーケティング本部デジタルコミュニケーショングループの坂口ゆうこマネージャー)
特に反応が高かったのは、化粧品選びに関する質問だったという。あくまで物語を一緒に作っていくことに重点を置いたため、化粧品選びの選択肢でもクリニークの商品名をそのまま使うといった露骨な訴求は避け、これまでに実施したキャンペーンのキーワードを生かし、自然と商品を想起してもらうことを狙った。
結果的には、通常のツイートと比較して、エンゲージメント率は約1.6倍。また、企画が話題になって拡散され、ツイートの表示件数(インプレッション数)は通常の約2.6倍になるなど、「ブランドへの好意度はかなり高まったのではないか」(坂口氏)。
特に、本施策では参加者に対して景品などを用意していないにもかかわらず、累計で6791件の投票が寄せられるなど、「景品目当てではなく、純粋に一緒に楽しんでもらえたのではないか」と坂口氏は見る。
多くの商品が溢れる中、消費者にブランドを選んでもらうことはますます難しくなっている。だからこそ、「ブランドに好印象を持ってもらえる企画を積み重ねていくことが、オンラインでは重要」(坂口氏)という考えに基づき、今後もソーシャルメディアで、フォロワーに楽しんでもらえる企画を実施していく考えだ。