東京・渋谷区がデジタルマーケティングを活用した観光情報の発信に力を入れている。3月までに、渋谷区内の800カ所にBeaconを設置する。このBeaconを通じて渋谷区観光協会が2016年12月に提供を始めたスマートフォン向けアプリ「PLAY! DIVERSITY SHIBUYA」に観光情報を配信する。将来的には設置したBeaconを情報発信のインフラとして企業に開放する方針だ。区内に店舗を持つ企業はBeaconを使ってクーポンなどを配信できるようになる。また、1月1日からは動画メディアと連携して、観光動画の配信も始めた。こうして観光地としての渋谷区の価値向上を狙う。

Beacon経由で観光情報を配信
Beacon経由で観光情報を配信

 「空前のインバウンドブームの中で、渋谷区にも多くの観光客が訪れている。ところが渋谷区は知名度の高い観光地が少ない」。渋谷区観光協会の金山淳吾理事長は、こう課題を口にする。渋谷区の観光地と聞いて、真っ先に頭に浮かぶのはハチ公やスクランブル交差点だろう。次いで原宿の竹下通りや表参道などが思いつく。だが、それだけが渋谷の魅力ではない。

 「渋谷は路地裏文化。一本、路地に入るとさまざまな飲食店、雑貨店がある。豊富な観光資源が眠っているのに、それを伝えていかなければ、スクランブル交差点前で記念撮影だけして終わりという経済活動のない観光地になってしまう」(金山氏)。知られていない観光資源を掘り起こして伝えていく。その伝達手段として、金山氏はデジタルマーケティングの強化に奔走する。Beaconの設置もその一環だ。

試験的な活用では4000人が利用

 昨年6月時点で300カ所にBeaconを設置した。商店街単位で設置の参加を募り、街路灯や店舗の軒先など、工夫を凝らして設置しているという。設置したBeaconは、店舗集客策などの実証実験に活用してきた。例えば、昨年のゴールデンウイークには、試験的にスマホ向けアプリを作り、利用者に対して、Beaconから参加店舗のクーポンなどを配信した。その結果、約4000人が利用した。

 この成果を受けて、本格的に提供を始めたのがPLAY! DIVERSITY SHIBUYAだ。区内の観光施設などが登録されており、近くを通るとBeaconが反応して、これまでに何回通り過ぎたかといったことが分かる。このアプリに対して、各Beaconの近くの店舗情報などを配信していく。現時点では「すべてのBeaconに反応すると、情報が過剰になるため、適切な情報量などを議論している」(金山氏)。議論が固まり次第、実際の施策に落とし込んでいく。

 動画活用にも取り組み始めた。渋谷区観光協会は1月1日から動画広告事業のオープンエイト(東京都渋谷区)が運営する女性向け動画サイト「LeTRONC(ルトロン)」と連携し、観光動画の配信を開始。LeTRONCの利用者は40万人程度だが、19万人が登録するFacebookページや、美容情報サイト「Yahoo! BEAUTY」などの提携サイトにも動画は配信される。

 スクランブル交差点に6万7000人が集まった「年越しカウントダウン」の様子を伝える動画の配信を皮切りに、1月中旬から毎日1本、隠れた名店などを紹介する動画をLeTRONC上で配信。イベントなど季節性の高い動画も織り交ぜながら、観光情報を発信していく。