「新春初売り!」「お正月を写そう」「おせちもいいけど~」──。お正月のテレビといえば、「春の海」をBGMに、振り袖や羽織袴を着たイメージキャラクターが登場して新年のあいさつや新春セールを案内する、そんなCMを各社用意して立て続けに流すのが一種の風物詩だった。ところが日常なかなか接触できていないテレビの前に久々に陣取ってみると、正月CMはすっかり様変わりしていた。
通常のCMに最後の数秒、「初売りは〇日まで」と告知を加えたパターンはあるものの、正月のために撮り下ろした限定CMがめっきり減ったように感じられる。

そんな中、王道の正月らしいCMで話題を集めたのが「au」だ。松田翔太が「桃太郎」、桐谷健太が「浦島太郎」、濱田岳が「金太郎」役で登場する「三太郎シリーズ」の正月バージョンを今年も放映した。
2016年「みんながみんな英雄」、2017年「やってみよう」に続く2018年のテーマは「笑おう」。前年(2017年)のCMソングを歌ったWANIMAは一躍ブレイクし、暮れの紅白歌合戦にも出場を果たした。2018年のCMソングの歌い手は未公表だが、ガールズバンドの「yonige」に違いない、とSNS上で盛り上がりをみせている。アーティスト選定と話題を盛り上がるシカケのうまさは今年も健在だ。
正月の鉄板CMを2018年も継続しているのが富士フイルム。広瀬すず、樹木希林に竹内涼真が加わり、「チェキプリント」や、撮りためた写真から人工知能が自動選択・レイアウトする「イヤーアルバム」を訴求するもの。もう「フジカラーで写そう」とは歌わなくなったが、岸本加世子が出演していた時代から見続けている世代は、懐かしさと時代の移り変わりを感じただろう。ちなみにCMでは戌年に掛けて見覚えのある白い犬も登場する。
スマホゲーム/アプリ系が目立つ
半面、かつては正月CMの常連だったコンビニ各社のCMを見かけずじまいだった。また、冬季オリンピック開催直前ながら、有力選手を起用したCMも思いのほか少ない印象を受けた。
それらに変わって目立ったのがスマホゲーム/アプリ系だ。Twitterで「正月 CM」と検索して出てくる再頻出ワードは、「デレステ」だった。これはバンダイナムコが配信しいる音楽ゲームアプリ「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」の略で、一言でいえばアイドル育成ゲームである。
このほか、ガチャピンが大量に登場してガチャを連想させるソーシャルゲーム「グランブルーファンタジー(グラブル)」や、関ジャニ∞の横山裕が登場するコミック配信サービス「まんが王国」など。在宅率が高くテレビ離れが一服する正月の若者層を獲得したいゲーム/アプリ系企業がCM時間帯を占有していた。
2018年のCM界の注目は、ずばりジャニーズ所属タレントの起用だろう。長らくネットメディアでの写真掲載がNGで、雑誌の表紙に載ってもWebではシルエット状で載せなければならず、「起用しづらい」との声が上がっていた。それが2018年元日、まずジャニーズ事務所公式サイト「Jonny's net」で所属タレントの顔写真が"解禁"になった。そしてジャニーズ残留組の元SMAP木村拓哉をLINEがお年玉CMに起用し、LINEニュースで写真付きのインタビュー記事を掲載、LINEスタンプも発売した。そごう・西武も、昨年樹木希林を起用した「わたしは、私。」シリーズに木村を起用し、自社WebサイトにYouTube動画とポスターを掲載している。
AbemaTVの「72時間ホンネテレビ」をきっかけにTwitterほか各種SNSアカウントを開設した離脱組3人と比べればまだまだ自由度は低いが、"ネット解禁"に動いているのは間違いない。人気メンバーを多数抱えているだけに、その進展次第では、広告主にとって多様なメディアプロモーションを展開しやすくなるだろう。