富士ゼロックスは、部品メーカーなど全世界の取引先との調達関連のやり取りをデータとして蓄積し、分析するシステムを5月に稼働させた。主要な約400社の取引先から導入し、約800社まで拡大していく。調達業務の効率化や震災など非常時のサプライチェーンの復旧に活用するだけでなく、優秀な調達部門の社員の働き方を分析しノウハウ化することにも利用していく。

 富士ゼロックスはデジタル複合機やプリンターなどの事業で、約800社の主要な取引先と部品の発注や納入についての情報をやり取りしている。そのやり取りは月間20万件に上るが、個人の電子メールやファクシミリによるもので進行状況などの把握が難しかった。「担当者によっては取引先への回答が遅れるなどの問題を抱えていても、組織として把握できないことがあった」(全社調達機能担当兼調達本部長の松浦智之執行役員)。

 そこで取引先とのやり取りをWebベースに切り替えた。調達システムの画面に部品などの取引情報を入力すると、システム側で「依頼」「受領」「回答」「変更」「取消」「中断」「削除」「再依頼」といったステータスを自動的に付与する。

デジタル複合機などの部品の調達情報を入力する画面
デジタル複合機などの部品の調達情報を入力する画面
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 これまで見えなかった取引の過程の状況が年間200万件以上のデータとして蓄積されるようになる。まずはシステム側で案件の回答期限をチェックして担当者に警告したり、上長などが案件の状況を定期的に確認したりする。

 さらに、優れた調達担当者の行動のモデル化も検討する。「できるバイヤーは普段からリスクを減らして仕事を迅速に進めるために、作業の優先順位付けをしている。こうした動きをデータで把握してモデル化し、ノウハウとして共有していきたい」(松浦執行役員)。

取引先とのやり取り情報を一覧できる
取引先とのやり取り情報を一覧できる
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調達システムは商品開発部門なども利用可能

 富士ゼロックスは製品やサービスに対する年間15万件の顧客の声(VOC=ボイス・オブ・カスタマー)を集めたデータベースを運用している。苦情やお褒めの声を全社の各事業部門で閲覧したり、分析したりできるようにしているものだ。今回取得できるようになった調達関連データとVOCを掛け合わせて、いい商品と調達先の相関など意味のある情報が得られるかどうかも探っていく。

 富士ゼロックスは東日本大震災後の2012年に調達システムを刷新し、生産に必要な部品の有無や在庫量から、どの製品の生産に影響が出るのかを割り出せるようにした。現在ある部品でどの製品が生産できるのかの“逆引き”を可能にしたものだ。システムの利用者を調達部門以外の開発や生産部門などに広げることで、「開発担当者が機能とコストについて自ら最適化できるようにしている」(松浦執行役員)。システムの利用者数は2014年には約300人と、2年前の15倍となった。

 今回の取り組みもこの延長線上にある。同社は一連の調達システムを内製で開発しており、外部に支払うコストはほとんど発生しないという。