好業績企業のKPI活用法を探る本特集の中編は、ヤフーとDeNAというネット企業のKPIを紹介する。両社ともオーソドックスな設定方法だが、ヤフーは「因数分解の構造に収まらない要因はKPIには使えない」、DeNAは進行中のプロジェクトを計測するのにふさわしいKPIを毎回考案する──といった点にこだわる。

【ヤフー】シンプルなKPIを独自技術で解析

 ネット企業はオンライン上でユーザーの行動データを蓄積しており、それをベースにしたKPI活用が浸透している。業界では「月間アクティブユーザー数(MAU)」や「1ユーザー当たりの月間収入(ARPU)」などが使われている。

ヤフーの連結業績の推移
ヤフーの連結業績の推移

 18期連続で最高益を更新し続け、4割以上もの営業利益率を誇るヤフーもそうしたKPIを活用する1社である。同社の屋台骨を支える検索連動型の広告事業はどのように活用し、どこで差別化しているのか。

 KPIは「売り上げ」をトップにしたツリー型の構造で、実際にシンプルかつ一般的である。「売り上げ」を数式の因数分解の考え方で分解していくことができる。例えば「売り上げ」は、「検索数」と「検索1回当たりの売り上げ」の掛け算である。その下位の層も同様だ。

 図に示した「カバレッジ(検索1回当たりの広告を返すことができた確率)」や、「デプス(広告を返せた回数のうち、表示した平均広告本数)」といった指標もヤフー独自のものではなく、ネット業界で一般に使われている。

ヤフーの検索連動型広告事業のKPI
ヤフーの検索連動型広告事業のKPI

 ヤフー マーケティングソリューションカンパニーマーケティング本部リサーチアナリシス部の天野武部長は「因数分解の構造に収まらない要因はKPIには使えない」と言い切る。「余計なノイズが入り込まないよう、見なくていいものは見せないようにすることが重要」(天野部長)との考えからきている。単純明快な指標のほうが、どこに変化が起きているのか分かりやすいからだ。

 ヤフーの検索サービスは、1日に数億回も利用されており、数千万本もの広告がユーザーに表示される。ヤフーIDでサービスを利用する月間アクティブユーザー数は2900万人。ユーザーの閲覧や検索といったオンラインの行動をデータとして蓄積し、ユーザーにマッチした広告を表示する仕組みが使われている。

 こうしたサービスで蓄積されたデータから算出されるKPIを、インターネット広告事業のマーケティング、営業、配信技術開発の各部門がモニタリングし、毎日チェックしている。

 例えば、「クリック単価」が下がったとする。その要因は、以前からの広告主が出稿の単価を下げたことかもしれないし、安い単価の広告主が入ってきたのかもしれない。

 一方で、要因の分析は複雑かつ独自の手法を駆使するのがヤフー流である。KPIの数字に変動があったとき、原因を突き止めるのは、天野部長が率いるデータ分析チームの仕事となる。

 天野部長は「変動の原因を追求するため、物理学の重心と密度分布の考え方を使った独自のビッグデータ分析手法を開発した」と明かす。これによって今起こっている問題が、営業が広告主に働きかけるべきものなのか、それとも広告の配信技術に関するものなのかを切り分けられるという。

【DeNA】専門部署が案件ごとにKPIを考案

 東京・渋谷にあるディー・エヌ・エー(DeNA)のマーケティング本部。そこでは日々、担当者がKPIを列挙したダッシュボードシステムの画面をチェックしている。表示されるのは全事業の概要や、様々なマーケティング目標の進捗状況である。

 KPIは単純明快なツリー構造で、前述のヤフーのインターネット広告事業のKPIの作り方とよく似ている。

 一方で特徴的なのは、固定的なKPIを使うのではなく、進行しているプロジェクトを計測するのにふさわしいKPIを専門部署が毎回考案し設定していることだ。

 DeNAのマーケティング本部はゲーム、オンラインショッピング、ヘルスケアなど新規に参入するような事業も含めて複数の部門を横断的に支援している。事業部門ごとにKPIの設定は異なり、部門とマーケティング本部が連携して、それぞれの課題に取り組むKPIを設定し、活用している。

 マーケティング本部のKPI活用の基本的な考え方は、「日次でKPIを見て、PDCAサイクルを高速で回していく」(マーケティング本部デジタルマーケティング部オウンドメディアチームの川田穂高マネジャー)というものだ。KPIを活用しても目標を達成できなかった場合、設定に問題があった可能性も検討。柔軟に見直すことで、より良いKPIを作り上げていく。

DeNAのマーケティング部門のKPIの活用法
DeNAのマーケティング部門のKPIの活用法

 DeNAは昨年1月に米ドーモの分析ツール「Domo」を導入して、KPIのダッシュボードシステムに活用している。

 高速分散処理基盤の「Hadoop」、表計算ソフトの「Excel」など多様なデータソースからKPIを算出しているが、以前は手間をかけて毎朝1時間30分ほどかけて集計していた。これがツールの導入で自動となり、現場におけるKPI運用の負荷が大幅に下がった。

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