日本郵政は今年10月から、データを活用した見守りサービスの実証実験に入る。米アップルのタブレットに、米IBMがアプリを開発。2年前からスタートしている人手による「郵便局のみまもりサービス」をICTで効率化する。タブレットの操作を通じて高齢者の動きを把握し、必要な時は郵便局員が駆けつける。

 「日本は65歳以上が3300万人も暮らす高齢化先進国。高齢化は世界的な傾向にあり、この課題解決のために米IBMと米アップルと一緒に実証実験に取り組む」

 日本郵政のグループIT統括部PMO室長とシステム開発管理部長を兼務する菊原英武執行役は、こう話す。日本郵政は2013年10月から6つの地域(北海道、宮城県、山梨県、石川県、岡山県、長崎県の一部)で、人手によって高齢者を見守る「郵便局のみまもりサービス」を実施しているが、今年10月からICT活用による実証実験に入る。

 具体的には、アップルのタブレット向けにIBMがアプリを開発。IBMのクラウドを通してサービスを実施する実証実験になる。実証実験の対象地域は、郵便局のみまもりサービスを提供している6地域の中から選ぶ。

タブレット操作のデータを活用

 実証実験の狙いは、見守りサービスの質を高めて効率化を図ること。ポイントは、タブレット操作のデータを活用して、高齢者の状態を把握する点だ。

 「高齢者が健康で自律的に暮らせるように、健康面はもとより、生活面や金融面での見守りを徹底する。生きがいを持って長く活動していただくことで、社会保障や医療、福祉関連のコストを抑えたい」と菊原執行役は期待する。

 実証実験では、様々なアプリを用意して、タブレットを使えば一通りのサービスが受けられるようにする。例えば、買い物支援などが検討されている。「注文しても大丈夫なのか」とネット販売に不安を持つ高齢者に対しては、郵政グループが認定した業者が、その人に合ったものを届けるもよう。

タブレットの画面イメージ
タブレットの画面イメージ

 実証実験の大きな目標の1つは、高齢者にタブレットを毎日使ってもらうことだ。そのための工夫が重要になる。電源を入れただけで、「実穂子さん、おはようございます」「体調はいかがですか?」などと、タブレットに表示する。画面を通じて「お薬は飲まれましたか?」と問いかけたり、「近くでこういう催し物があります」と提案したりして、健康を管理しつつ、より活動的になってもらうようにタブレットから働きかける。

 電源が入っていない場合は郵便局員が駆けつけるようなことも検討している。そのために、緊急時に家に入っていいかどうか、承諾を取っておくケースも出てくるという。デジタルデバイスと人によるサポートをバランス良く組み合わせた、高齢者一人ひとりに合った、見守りサービスを目指す。

 サービスの質向上のカギを握るのがデータだ。「常にデータを収集することによって、使えば使うほどきめ細かいサービスを提供できるようになるのではないか」と、菊原執行役は説明する。日本IBMの東京基礎研究所では、目や耳が不自由な方にはどのようなインターフェースがいいかを研究している。今回、高齢者のニーズに合い、なおかつ毎日使ってもらえるようなアプリを開発したいという。毎日使ってもらうことで蓄積されるデータを分析することで、高齢者の趣味・趣向が分かってくる。個人情報をしっかり守りながら、高齢者の理解を深めていく。

 実証実験では、料金体系についても検討する。どんなアプリならいくらで使ってもらえるのか、高齢者はもとより、遠くに住む子供などを対象に調査するもよう。

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