三井住友銀行は、IBMの人工知能「Watson」をコールセンター業務に来年から活用すべく、今年9月から実用検証をスタートする。新たに音声認識技術を使って顧客とオペレーターのやり取りをテキストデータ化。問い合わせ文をWatsonに送って確信度の高い順番に回答を列挙させる。Watsonの機械学習機能によって回答精度の向上を目指す。

 「顧客からの問い合わせに対するオペレーターの回答について、品質のバラツキを抑えて、応答スピードを速めたい」。来年、コールセンター業務にIBMの人工知能「Watson」導入を検討している三井住友銀行 システム統括部の岡知博部長代理は、その狙いを話す。

 三井住友銀行は昨年9月から12月にかけて、Watsonの技術検証を実施。160件の問題に対して相応しい回答を、確信度の高い順に上位5つ表示させたところ、約8割が正解という結果を得て、「技術的に使えるレベル」(岡部長代理)と判断した。

 技術検証では、あらかじめWatsonに業界の専門用語の辞書5000語、QA集1500件、業務マニュアル1500件を覚え込ませた。オペレーターがテキスト入力すると、Watsonは一瞬で5つの回答をスコア順に表示してくれるという。

 来年の本格導入に向けて、今年9月から神戸と福岡にある2カ所のコールセンターで10席ずつ用意して実用実験に入る。今年3月から要件定義を行った。

音声認識で会話履歴を表示

 技術検証ではオペレーターが問い合わせ文をテキスト入力していたが、実用検証では、音声認識技術を活用して顧客とオペレーターの声を認識させる。表示された会話履歴から、オペレーターが問い合わせ部分をクリックしてWatsonに転送して、回答させるようにする。

 オペレーター一人ひとりのマイクから音声を拾うため、認識率は8割以上という。運用上では、オペレーターが顧客の問い合わせを受けて、その発言内容をはっきりと繰り返す。電話越しの声ではなくオペレーターのマイクを通じて入力することで認識率を高めるようだ。ちなみに、今回採用する音声認識技術はIBM製ではなく、基本的に誰でも対応できる不特定話者認識を採用した。

 WatsonはQA集と業務マニュアルの合計約3000件のデータから瞬時に回答を見つけてきて、確信度の高い上位5つを表示するが、その回答に対してオペレーターが「役に立った」「役に立たない」のどちらかを入力する。後者の場合であれば、Watsonは次回から同じような質問に対して「役に立たない」と指摘された回答は選ばなくなるという。

 実用実験では、こうした機械学習の徹底によって、Watsonをより賢くしていくという。「上位5つの回答に関して、技術検証時に8割だったものを8割5分とか、9割水準まで高めたい。あるいは、上位3つの回答で正答率8割を実現したい」と岡部長代理は期待する。

 三井住友銀行システム統括部業務インフラ企画グループの小原彰グループ長は、Watsonについてこう語る。

 「Watsonの登場はセンセーショナルだったが、実際に活用するには下準備が大変だ。業務サイドとも連携して地に足を付けて実務に使えるようにしたい。うまく使えば、効果を発揮できる。Watson以外の要素技術を組み合わせることで、より発展的な使い方ができる」

 来年以降、Watsonが銀行業務を大きく変革していく可能性が出てきた。実用実験の結果が注目される。

Watsonを活用したコールセンター業務の仕組み
Watsonを活用したコールセンター業務の仕組み