トヨタ自動車グループのIT関連の開発会社であるトヨタIT開発センター 開発・調査部の長田祐プロジェクトマネージャーはBig Data Conference 2015 Springの2日目となる4月22日、「クルマデータと新たなIoTデバイスが変える『未来のIT』~トヨタグループのハッカソンから得た知見~」と題して講演を行った。

トヨタIT開発センター 開発・調査部の長田祐プロジェクトマネージャー
トヨタIT開発センター 開発・調査部の長田祐プロジェクトマネージャー

 「海外のハッカソンは開発のレベルが高くて充実している。ビジネスへの実用性は高いので、早期成熟型である。一方で日本のハッカソンはアイデアが多種多様。荒削りだが磨けば光る大器晩成型だ」

 トヨタIT開発センターの長田氏らはここ1~2年国内外でビッグデータを活用したハッカソンを展開しているが、国内外の比較についてこう語る。

 ハッカソンでは、車速や加速度、ブレーキのオン・オフ、エンジン回転数、走行距離といった挙動、駐車ブレーキや燃料残量、ワイパー動作といった状態、ドア開閉やドアロック、ウィンドウ開閉などのデータを、ハッカソン用の試作API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で取得できるようにしている。性別分布や年代分布、車種分布、ワイパー稼働分布、ヘッドライト点灯分布、急ブレーキ地点といった統計化したデータも利用できるようしている。

 これらのデータを活用したハッカソンからユニークなアプリがいくつも出てきたという。

 その1つが、ゲリラ豪雨を知らせるサービスだ。クルマのワイパー情報を使って、例えば30分以内の東京・渋谷でゲリラ豪雨が降るといった情報を提供できるという。ワイパーが4段階の「強」になっているクルマの群れがどのくらいで渋谷に近づくのか、把握できるからだ。

 信号機のライブ情報を伝えるサービスは、「この信号機はあと10秒で赤になる。時速50kmで走ると信号機が青になってスムースに走れる」とドライバーに伝えるというものだ。昨年イスラエルで行ったハッカソンで提案されたもので、イスラエルの技術者がクルマのスピードデータなどを基に信号機の情報を予測するアルゴリズムを考えたものだという。

 長田氏は「『信号機の情報はどこで取るのか』とよく聞かれる。警察がオープンデータとして情報を出せば正確だ。しかし、警察は慎重。北米では警察が出している事例があるが、仮に出さなくても予測できる。信号機の情報は自動運転にも必要だ」と説明した。

地方やドライバー以外の視点も重要

 昨年、海外では先ほどのイスラエル、それに米シリコンバレーで実施した。国内では11カ所でハッカソンを開催した。「都市部では若い人がクルマに乗らないので、アイデアがなかなか出ない。地方の方が(乗る人が多く)その土地ならではの課題を解決するアイデアがたくさん出てくる」と、長田氏は話した。

 昨年9月に東京で実施したハッカソンでは、クルマ好きや小学生など44人が参加。「運転を親子で楽しむ」や「渋滞を出会いの場に」など、自動車メーカーではなかなか出てこない、個性あふれるアイデアが出たと、長田氏は披露した。

 その時の最優秀賞は「シンクロナイズド・ドライビング」。マイコン内蔵の専用ハンドルを子供が持ち、父親と一緒に運転を学習するというアプリで、子供と親の運転がどこまでシンクロするかを測定する。「クルマの象徴的なアイテムであるハンドルを追加デバイスとして連携させ、子供も安全運転を学べるというのはユニーク」と長田氏は紹介した。

 今年1月に東京で開催したハッカソンには、ドライバーだけでなく、非ドライバーも参加した。インテルや東芝などがIoTデバイスを提供。車両データとIoTデータをマッシュアップして、「クルマ好きとは言えないクルマユーザー」のクルマの課題について意見を拾い、アイデアが検討されたという。

 最優秀賞は、「Senrigan -交通弱者をみえる化システム-」。子供に位置情報アプリ入りのスマートフォンを持たせ、死角が多いなどで事故が多発する地点に子供が存在したらドライバーに知らせて、注意を喚起する。

今後、実サービスへの展開も検討していく
今後、実サービスへの展開も検討していく

 ハッカソンで得た知見を活用した今後の取り組みとして長田氏は「1000万台の走行データや自治体のオープンデータ、ソーシャルデータ、公共データなどをマッシュアップして、新しいサービスを提供しようとしている」と説明した。

 また自動運転について「必要なのは安全で、何よりも重要だ。当分の間、自動車メーカーとIT企業が競合していくだろう」と講演を締めくくった。

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