リクルートマーケティングパートナーズは、東京大学と共同で、同社が展開する大規模オンライン講座「受験サプリ」における最適な学習法を探求している。第一弾として勉強でつまずくことがない方法の実装を目指す。今回、受験サプリ受講者の中に1つの理想的なモデルとなる学習法を実践している一群がいることを確認できた。
受験サプリの会員数は約30万人。いつでもどこでも自分のペースで学習できるという利便性に加えて、月額980円(税別)で2000以上の講義動画が見放題という手軽さが受けて会員数を増やしている。
ただ、生徒の中には講義が理解できず、つまずいてしまう人も少なからずいる。リクルートとしては安定して学習を継続して志望校に合格できる方法を提供することが、事業の拡大にもつながる。
共同研究に取り組む東京大学工学系研究科総合研究機構の松尾豊准教授は、「各講義は関連し合っており、ある講義を理解するには関連する別の講義を理解している必要がある。継続して学習できる人は、ある講義が理解しにくいと感じたら、それと関連する講義の中で理解が不十分だった講義に戻って勉強し直している。こうした学習者を、自分自身で利用教材を適切に選択しているという意味で、昔から『自己適応学習者』と呼んでいる」と、解説する。
データ活用によって、生徒1人ひとりに最適な指導をする学習、いわゆる「アダプティブラーニング」という研究分野の1つだ。「アダプティブラーニングは、データ活用によって学習者のニーズや知識、好みなどに基づいて、適切なコンテンツが適切な時間に学習者に提供されること」と、リクルートマーケティングパートナーズ ネットビジネス本部事業開発室の萩原静厳・ビッグデータエバンジェリストは話す。大規模オンライン学習は学習履歴データを収集・活用でき、アダプティブラーニングの研究には追い風になっている。

「自己適応学習者」に着目
リクルートと東大は、受験サプリの効果的な学習法提供の第一弾として、自己適応学習者に着目して、その学習法を受験サプリに実装するべく、共同研究に取り組んでいる。受験サプリを受講した約30万人の受験生のうち、積極的に受験サプリを活用した人から約3万人のデータを分析に使った。
「今回の共同研究では、約3万人の中に数学の自己適応学習者が約380人存在することが確認できた。自己適応学習者に関して、確認テストを実施しなくても、各教材の理解度をほぼ推定できることも分かった」(東大松尾研究室に所属する大学院生の那須野薫氏)と言う。
自己適応学習者は、性別や所属する高校や志望大学のレベルとは関係なく存在することも検証された。
今後は、受験サプリ受講者の中で存在が確認された自己適応学習者が、つまずくことなく継続して学習を続けることができ、最終的に志望校に合格できたかどうかを検証するようだ。さらに自己適応学習者の方法を実装する学習サービスを1年以内に開発する計画だ。