自動車やスマートフォンなど向けの電子部品大手のアルプス電気は、ビッグデータを活用した製造プロセスの改革に取り組んでいる。日中メキシコの3工場をネットワークでつないで製造データをリアルタイムに収集したり、日本から世界各地の工場にある生産装置を設定したりできるようにする。ドイツが国を挙げて取り組む次世代製造業政策「インダストリー4.0」と同種の取り組みであり、日本の製造業の競争力強化に向けた動きが本格化している。

 スイッチやコネクターなどを生産する日本の涌谷工場、中国のDalian Alps Electronics、メキシコのAlcom Electronics de Mexicoをネット回線でつなぎ、製造工程にある生産装置のモーター速度などの稼働状況、各工程における品質自動検査などのデータを収集し、統計的な手法も活用して分析している。

 3工場の情報が集まることで、データの母数も増える。「どこの工場のどの生産ラインの効率がいいのか悪いのかを把握したうえで、すぐに品質の改善に活用できる」(生産本部生産技術担当 兼 生産本部生産技術統括部長の枝川仁士取締役)。各工場内でもデータをリアルタイムで処理しており、現地の生産装置の設定値の補正などはすぐに行っている。

 日中メキシコの3工場では2年前から、新製品の投入や生産品目の変更などの際に必要な設定変更をほぼ自動でできるようにした。日本のセンター側から、生産装置の数値の設定などを集中管理できる。こうした操作を可能にするため、装置の可動部には、空気圧でなくモーターで駆動するタイプを選択したという。

アルプス電気が進めている生産現場のビッグデータ活用
アルプス電気が進めている生産現場のビッグデータ活用

データの取得・送信装置を自作

 生産ラインからデータを取得し分析するには、製造装置がデータの出力に対応したうえで、それらのデータを収集したり、集約したりする装置が必要だ。ただし全工程・全工場で対応するとなると大きな投資が避けられないのが一般的な課題である。アルプス電気は多くの生産装置を内製しており、装置からデータを収集してネットワークでやり取りする装置も内製している。必要最低限な機能に絞り、1個当たりのコストを抑えているという。

 アルプス電気は3工場のほか、国内工場でデータをリアルタイムで取得する仕組みを導入中である。その後、全世界の工場にも導入する。

 このほかインダストリー4.0などでサイバー・フィジカル・システム(CPS)と呼ぶ、デジタル技術を活用した製造プロセス支援にも取り組んでいる。具体的には3次元で生産設備や工程を設計できるツールを導入。開発した新製品の生産工程をバーチャル空間上に構築して、仮想的に稼働させて実働時の問題をあぶり出している。

 製造ラインに関わるメカニカル(機械)や制御、エレクトロニクス(電気)など関係各部門の担当者が稼働の確認作業を並行で行うことが可能となり、生産に着手するまでのリードタイムを2分の1に短縮できたという。

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