複数のネットスーパーの価格を比較できるサイト「NESPA(ネスパ)」が順調に会員数を増やしている。昨年12月下旬にサイトを開設し、今年3月末時点で会員数は約3万人。現在7社のネットスーパーから毎日4回、商品価格データを送ってもらい、比較できるように形式を統合している点がポイントだ。

ネットスーパーの価格を比較できるサイト「NESPA(ネスパ)」
ネットスーパーの価格を比較できるサイト「NESPA(ネスパ)」

 重たい飲料やお米、かさ張るトイレットペーパーやティッシュペーパーなどを運ぶのは大変だが、ネットスーパーを使えば、サイトで注文するだけで自宅に届けてもらえる。買い物に行くのが億劫な高齢者や、子育てと仕事の両立で忙しい働く主婦にとっては便利な存在だ。しかし、欧米に比べると、まだ利用が少なく、採算が合っているネットスーパーはごくわずかだとみられている。

 NESPAのサイトを運営するのは、昨年9月に設立されたNESPA JAPAN(東京都港区)。博報堂DYホールディングスの子会社だ。約2カ月間で無料会員数は1万人を突破して、今年3月時点で約3万人に達した。同サイトの月間ユニークユーザー数は約20万人(2015年3月時点)。1回当たりの利用額は4000~5000円で、20~30代が最も多く、男女比率は半々だ。「潜在的には約300万人が会員になる可能性がある」と、NESPA JAPNの太野垣洋一社長は話す。

 現在は、パソコンやタブレットでの利用を前提としている。スマートフォン(スマホ)アプリについては、2015年秋リリースする予定だ。NESPAは、博報堂DYホールディングスのベンチャー制度を活用しており、新規事業を育てる実証実験という位置づけである。今年7月に今後の展開について、博報堂DYの経営者が意思決定する。事業継続が決まれば、現在は取り扱っていない生鮮食品についても、価格比較できるようにするという。

商品価格を毎日4回更新

 NESPAのサイトにアクセスして、「お買い物を始める」というバーをクリックし、自宅住所の郵便番号を入力すると、配送可能なネットスーパーが表示される。無料の会員に登録すると、郵便番号を入力することなく、配送可能なネットスーパーが自動的に表示される。

 まずは買い物したいネットスーパーを選ぶと、そこがお薦めする商品が表示される。飲料や菓子、日用品といった商品カテゴリーを選ぶと、商品が一覧になる。欲しい商品をかごに入れると、配送料を含めた合計額で最も価格が安い順番にネットスーパーがランキングになる。ちなみに、選んだ商品そのものを取り扱っていない場合は、自動的に類似品を選択してその価格で合計額が算出される。 

 最終的に、カゴに入れた商品を確認して、合計額が最も安いネットスーパーを選ぶ。するとそのネットスーパーのサイトに移動して、決済へと進む。あとは、注文した商品が届くだけである。

 現在利用できるのは7社。「イオンネットスーパー」「ケンコーコム」「SEIYUドットコム」「爽快ドラッグ」「TRIAL」「カクヤス」「LOHACO」だ。

 同サイトが注目されるのは当然、より安く購入できるメリットがあるからだ。買い物において、価格は重要な判断材料。複数のネットスーパーで価格比較が瞬時にできるサイトは、これまでなかった。その一因が、様々なネットスーパーが持つ商品データの形式がバラバラであることだ。

 ネットスーパーの商品価格は毎日変わる。シーズンが変わるタイミングなどで新商品がたくさん発売される。そのため、NESPAでは毎日4回データを更新。ネットスーパー各社の商品データ(商品名、価格)は毎日、NESPA JAPANのシステム子会社に送られ、さらにデータの整理・統合ソフトを提供するアグラ(東京都新宿区)に転送され、NESPAの統一形式に合わせる。その後に、NESPAのシステム子会社に統一形式の商品データが送られる仕組みだ。

肝は、正確かつ迅速なデータ統合

 ポイントとなるのが、ネットスーパー各社によって、商品データの形式が違うので、NESPAの標準形式に変換する作業が発生する場合があることだ。この作業を正確かつ迅速に実施するのがアグラだ。

 アグラは業界ごとに商品の統一コードを持っている。ネットスーパー各社からデータを集め、統一コードに、メーカー、品番、ブランド、味、価格の形式に、各社の商品データをマッピングする。検証の結果、例えばA社の商品データは合格だが、B社の商品データには価格の項目がなく、不合格と自動判定される。

 そこでアグラのコンサルタントがB社の商品データのエラー内容の判別・ロジックを追加。「商品名」のテーブルに含まれていた価格データを抜き出して「価格」テーブルに移し、もう1度検証する。この結果、B社の商品データも合格との判定が出て、統一形式に統合できることが確認できる。

 「ネットスーパー各社の商品データを比較できるように統一する作業(データ統合)は3カ月と短期間だった。アグラ以外の他社も『できます』と言ってきたが手作業。しかも、毎日4回のデータ更新に対応できるのはアグラしかなかった」と、NESPAの太野垣社長はアグラを採用した経緯を説明する。

 様々な業界でデータ活用の取り組みが行われているが、最も手間と時間がかかる作業というのが、各データを使える状態にすることだと言われている。アグラの丹下博社長は、「データサイエンティストの仕事は、約8割がクレンジング。この作業をいかに軽減するかが、データ活用を広げていくうえで大きなポイントだ」と言う。

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