タクシー業界2位の国際自動車は、個々の顧客動向データより、外部データも使った需要予測モデルを導入することで実車率の向上を図ろうとしているようだ。グーグルからはビッグデータを使った需要予測モデルの提案を受けているとも聞こえてくる。

国際自動車、需要予測へ

 タクシー業界全国2位の国際自動車(東京都港区)は、いまだ配車アプリを投入していない。「配車アプリは選択肢の1つだが、絶対ではない」(同社)という立場を取っているからだ。どちらかというと国際自動車は、個々の顧客動向データより、外部データも使った需要予測モデルを導入することで実車率の向上を図ろうとしているようだ。

 需要予測モデルについては、既に内外の大手IT企業から様々な提案を受けているという。詳細は明らかではないが、渋滞情報や検索サイトの利用情報などを基に、需要を先回りする戦略を考えている。グーグルからはビッグデータを使った需要予測モデルの提案を受けており、かなり乗り気になっているという話も聞こえてくる。国際自動車企画・広報室の森田健太郎氏は「『気がついたらkmタクシーがいる』という世界を目指している」と話す。

 一部のサービスでは需要データの収集を始めている。

国際自動車の女性運転手による迎車サービス「リラクシー」
国際自動車の女性運転手による迎車サービス「リラクシー」

 女性運転手による迎車サービス「リラクシー」は、女性運転手がカラフルなクルマを運転して、高齢者や妊婦、幼児の送迎をする。例えば、高齢者を病院に送りとどけるだけでなく、診療科の受付まで付き添うこともある。「女性だからこそ安心して任せられる」(国際自動車)と評価されている。

 リラクシーは昨年10月にスタート。三鷹営業所(東京都三鷹市)だけでリラクシー専属の7人を含めて約20人の女性運転手が所属する。

 三鷹市と武蔵野市などの地区では、リラクシーやワゴンタイプのタクシーに関して需要データを収集して、将来的に需要予測に役立てる試みを始めた。病院や保育園などの送迎といったあらかじめ目的が分かっている需要が、何曜日の何時にどのくらいあるかを把握できるようになるので、運転手の人員数やシフト体制、クルマの台数確保などに生かせるというのだ。

ロボットタクシー実証実験へ

 政府は今年3月19日、安倍晋三首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議を開き、戦略特区の第2弾として、秋田県仙北市、仙台市、愛知県の3カ所を決めた。「地方創生特区」という位置づけで思い切って規制を緩和して地方の活性化を目指す。3カ所のうち愛知県では、自動走行自動車などの実証実験に取り組むとしている。

 その実証実験に名乗りを上げているのが、自動運転の技術開発を手がけているベンチャー、ZMP(東京都文京区)だ。同社は2012年、トヨタ自動車の「プリウス」を自動運転できるように改造。一般の自動車で自動運転できるプラットフォームを、自動車メーカーなどに発売している。同社の谷口恒社長は「地方など、都市の郊外で公共交通が使えない地域では、自動運転に関するニーズは高い」と話す。

ZMPが自動運転できるように改造したクルマ「RoboCar」
ZMPが自動運転できるように改造したクルマ「RoboCar」

 谷口社長は、「ロボットタクシー」という構想を打ち出している。地方の幹線道路などの一部に専用道路を設けて、無人運転のミニバン車を走らせようというもので、「乗車運賃は通常のタクシーに比べて10分の1で運営できる」(谷口社長)と言う。

 「無人運転は運転手の人件費がかからないので、コストを抑えることができる。宅配便などの荷物を運んだり、広告を取ったりするなどコストを下げることはいくらでも考えられる。今年、実証実験を開始できれば、2018年には商用サービスを始められる」と谷口社長は言い切る。

 谷口社長には持論がある。「今自動車に乗っている人は今すぐ無人の自動運転が必要ではないかもしれない。必要なのは、安全対策としての自動ブレーキや高速道路走行時での有人自動運転機能だ。無人の自動運転を望んでいる顧客は、自動車を持っていなかったり、運転できない高齢者や子供などだったりする。こうした顧客のニーズに応えたい。それがロボットタクシーだ」。

 実は「世界的に見て、運転席に人間がいない自動運転は認められていない」(谷口社長)と言う。愛知県での実証実験では、運転席に人間がいない状態で自動運転を実施するとみられている。画期的な実証実験と言える。「時速10kmから同20km、同30kmと徐々に速度を上げていき、同60kmぐらいでの安全走行が確認できれば、後は乗り心地などの検証を進めることになる」と、谷口社長は展望する。

 「ロボットタクシーの商用サービスは、鉄道系の旅行会社が手がけるべきだと思う。鉄道と直結したほうが顧客のニーズに応えやすい。ZMPの役割は、一般のミニバン車を自動運転できるように改造する会社に技術をライセンス供与すること。さらに、自動運転ミニバン車の運行や車載情報を管理するプラットフォームをクラウドベースで提供する。改造会社はメンテナンスを手がけることになるが、ZMPがクラウドを通して自動運転ミニバン車の管理情報を伝える。プラットフォームの運営などでは、IT会社と連携を図っていく」(谷口社長)

 ロボットタクシーが街の安価な交通インフラとなれば、一般のタクシー以上に人や荷物の移動データが大量に蓄積されていく可能性がある。データの分析で街全体のヒトやモノの移動状況を把握し、一台でタクシー輸送から宅配便の配送までこなす複雑な条件の運行計画を立てられるようになるだろう。人工知能が進化すれば、計画立案から運転まですべて自動化できる。ロボットタクシーは、交通の便が悪い地方の活性化に一役買う存在になるかもしれない。

 そんな時代に日本交通としても、顧客ニーズに応えるソリューションを提供するとみられる。ただし、グループだけで約7000人の運転手を抱える立場で、軽率な決断はできない。今は情報収集しながら、来るべき時に備えている。

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