大阪のねじ商社サンコーインダストリー(大阪市西区)は2014年9月、ビッグデータ分析で配送を最適化する新システムを稼働させ、従業員の残業時間の半減を実現した。

サンコーインダストリーは約70万種ものねじを扱う
サンコーインダストリーは約70万種ものねじを扱う

 サンコーインダストリーはメーカーからねじを仕入れて、二次卸などに販売している専門問屋だ。ここ5年で扱うねじの種類は26万種増えて、71万種に達した。顧客の注文に対応して梱包、発送する作業の負荷が高まり、従業員の残業時間が大きく増加していた。

 この状況を脱するため取り組んだのが、顧客の発注パターンの分析である。同社の顧客は必要に応じて1日に何度も発注してくることが多いという。商品を注文翌日に顧客の手元に届けるために、午後5時で注文をいったん締め切り、箱詰めと発送の作業にとりかかっていた。

 ただ個別のデータを見てみると、「早い段階で1日の発注を済ませている顧客がいた。それも同じような発注パターンが少なくない」(奥山淑英社長)。

 そこで同社のデータ分析を支援していた、価格リスク対策のマーケット・リスク・アドバイザリー(東京都新宿区)に、顧客ごとの発注の“癖”を分析してもらうことにした。月や曜日別に、最終の発注時間帯の分布を作成。「顧客ごとに何時であれば、最終の発注であるのかを判定できるようにした」(マーケット・リスク・アドバイザリーの大崎将行代表取締役)。

約4500社の最終注文を割り出す

 このモデルを約4500社の顧客に適用することで、以前よりも2時間前倒しとなる午後3時に発送を始められるようになった。その結果、午後5時以降に扱う荷物の量が減り、社員の合計残業時間は月間2000時間強まで半減。月500万円以上、1000万円近い、残業代の削減効果を出しているという。

 サンコーインダストリーは従業員が約350人と中堅企業であるが、データ活用の投資には積極的だ。1990年にBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入しており、実に25年分のデータを蓄積している。

 今回の「得意先別締め時間オペレーション」プロジェクトは、社内外の混成チームで臨んだ。奥山社長が自ら陣頭指揮を執り、マーケット・リスク・アドバイザリーの大崎氏が分析官、仕入部の社員、ITベンダーであるオーシーシー情報センター(大阪市中央区)の担当者、などでチームを組んでいる。

 奥山社長自身も微分積分を学んで、数理モデルへの理解を深めたという。「以前はねじの点数が多すぎて、経営が現場に口出しできなかった面があるが、それではいけないと感じていた。仕入れはセンスだと言っていたが、リーマンショックのような事態には対処できない」(奥山社長)。

 投資も攻めの姿勢である。「経営としてはビッグデータ関連に投資するのであれば、コスト削減ではなく、収益アップで臨みたい。人を削減するのではなく、同じ人手で成長していくためのものだ」(奥山社長)。各種のKPI(重要業績評価指標)を定め、常にウオッチしている。

ねじはラックに収め、注文に応じてピッキングする
ねじはラックに収め、注文に応じてピッキングする

 発送時間の最適化と並行して、倉庫内でのピッキング時間の短縮にも取り組んだ。

 Webページ上に同時に出現することが多いキーワードは「共起率」が高いとされる。このアプローチを応用して、一緒に注文される商品同士を配送センター内の近くの場所に置くことにした。

 ねじ注文の共起率の基準を定めて、値が高いものを流通センターの4階に集中させた。昨年9月に運用を始めたところ、作業効率は上がったものの、時間帯によっては共起の度合いが高すぎて、作業者や台車が渋滞するケースも出てきたという。

需要予測も始める

 今後どのねじ種がどの程度売れるのかの、需要予測もこの2月に始めた。70万種のうち上位1000種について月1回予測している。マーケット・リスク・アドバイザリーは鉄や為替の価格予測が専門であり「どの程度の需要になるのかだけでなく、その時点でどの程度幅が振れそうかを予測する」(大崎氏)という。

 こうしてはじき出した需要予測は市場の変化を知るだけでなく、実施したキャンペーンの効果測定などに利用していく。

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