ゲームソフト開発大手のセガが、ビッグデータの活用を積極的に進めている。事業ごと、サービスごとにバラバラに発行・管理していた自社ユーザーの会員IDを、3年前に「SEGA ID」として統一。昨年5月には米クリックテックのBI(ビジネスインテリジェンスツール)ツール「QlikView」を導入した。

 同BIツールを使い、それまで製品やサービス単位で管理していたプレイヤーの参加人数やプレー時間、課金による売り上げの推移といったデータと、SEGA IDで把握するユーザー属性や行動履歴などを合わせて分析し、ゲームソフトの設計やマーケティングに生かし始めた。SEGA IDの登録者は現在、500万人弱に達している。

 BIツールで分析が簡単になった結果、例えば、PCオンラインゲームの中で、どの年代のユーザーが、どんなゲームを好んで選び、どのような時間帯に主に遊ぶかといったデータを手軽に確認できるため、あるゲームの中で最も集客が期待できそうな曜日と時間帯を読み取り、該当する時間帯に実際にゲーム内イベントを開催し、予測通りに集客数を押し上げた。

 同様に、アミューズメント(AM)ゲームでは、「最近、主なユーザーだった子供がゲームセンターなどに足を運ばなくなってきた一方、若い頃にAMゲームで遊んでいたシニア層の客が増えてきたのでは」という仮説をデータによって検証し、シニア層の客が興味をひきそうなAMゲームの開発を検討し始めたという。

セガが導入したQlikViewでデータを分析する際のダッシュボード画面
セガが導入したQlikViewでデータを分析する際のダッシュボード画面

 SEGA IDやQlikViewの導入を主導した、セガ社長室プロジェクト推進部SEGA ID推進課(4月1日からは持ち株会社制への移行で、セガホールディングスIT本部CRMソリューション企画推進部SEGA ID推進課)の小島雄一郎課長は、「これまでもクリエイターやマーケターが何となく感じていた事象が、データによって裏付けられるようになったことが大きい」と強調する。

 ID統合で予想外の事実が判明したケースもある。例えば、PCオンラインゲームの「ファンタシースターオンライン2(PSO2)」で遊ぶ同社のユーザーはほぼ全員、「セガの他のゲームソフトには目もくれず、PSO2だけを長時間遊んでいることが分かった」(小島氏)。その結果、セガが提供する複数のゲームを1人のユーザーに楽しんでもらえるためのクロスセルマーケティングのあり方を、「改めて考え直すきっかけになった」(小島氏)と言う。

家庭用ゲームにもID利用を拡大へ

 今後は、SEGA IDを取得してくれるユーザーの数をさらに増やし、社内でのデータ活用をより積極的に推し進める腹づもりだ。

 実は現在、SEGA IDを発行しているのは、PCオンラインゲームのユーザーと、ゲームセンターなどに置かれたAMゲームのユーザー、そしてAMゲームに付随するモバイルサービスのユーザーに対してだけだ。多くのユーザーが楽しむ家庭用ゲームは、「店頭での売り切り販売が中心のため」(小島氏)、まだ含まれていない。

 また、PCオンラインゲームのユーザーはほぼ100%SEGA IDを取得するが、AMゲームのユーザーは、SEGA IDの取得率が低い。同社のプレイデータ保存サービス「Aime」カードに登録する際にSEGA IDを使うが、「100円を現金で投入すればIDに関係なく遊べてしまう」(小島氏)ためだ。

 SEGA ID取得の手続きを簡略化し、家庭用ゲームのユーザーにもSEGA IDを発行する手立てを講じて、AMゲームのユーザーの取得率もできるだけ引き上げるのが、当面の目標だ。

 同時に、現在、AMゲームの開発担当部署などが積極的に導入しているQlikViewを、家庭用ゲームの開発担当部署にも導入するよう働きかける。ただし、データだけに基づく開発は絶対に勧めない方針だ。小島氏は言う。「エンタテインメントの世界はどこまでいってもクリエイターの感性が問われる。データに100%基づいた創造などあり得ない。データ分析を重視する立場としてBIツールの導入は働きかけるが、あくまでデータはデータでしかないという立場は崩さないように気を付ける」。

 セガは4月1日に持ち株会社制に移行し、セガホールディングスの傘下に、家庭用ゲームやPCオンラインゲーム、スマートフォン向けゲームなどを手がける「セガゲームス」、AMゲームなどを手がける「セガ・インタラクティブ」などの事業会社が多数ぶら下がる組織に変わる。ビッグデータの利活用を推進してきた社長室プロジェクト推進部SEGA ID推進課は、わずか3人という少数精鋭の体制のまま、セガホールディングス内のIT本部に属し、これまで通り全社を挙げてデータの利活用を進める予定だ。「ゆくゆくは、ゲームソフトの開発やマーケティングだけでなく、ゲームセンターなどの集客に貢献するオムニチャネルなどにも取り組みたい」(小島氏)と言う。