日本最大級のメガネEC(電子商取引)サイトを展開するオーマイグラス(東京都品川区)は昨年11月、東京・渋谷に初めて直営店舗を開店。12月以降3カ月連続で黒字を達成した。決め手はデータを駆使した的確な品揃えにある。

直営店舗「Oh My Glasses 渋谷ロフト店」の黒字達成の決め手について、清川忠康社長は、次のように語る。
「ECサイトの運営で培ってきたデータ経営が、リアル店舗の運営でも奏功している。ECサイトで収集している生データを基にしたマーチャンダイジングによって、渋谷ロフト店を訪れる20代、30代にマッチした品揃えを実現している点が大きい。1~2週で商品の品揃えを変えることでいつ来ても新鮮な売り場作りにつなげている」
ECサイトのデータを見ていると、都道府県単位で年代別、性別でどんなメガネのデザインが売れているか、把握できる。例えば、東京都に住む20代、30代の若い人がどんなメガネを好んで買うのか、購買データや商品データなどを基に割り出しているのだ。
こうしたデータを基に渋谷店に並べる商品を決める。ECサイトを展開している本部がマーチャンダイジング機能を果たしているので、店舗の店長や店員は一番重要な接客に集中できる。清川社長は「リアル店舗に関しては『引き算の戦略』を展開している」と説明する。
一方でECサイトにとってリアル店舗は「ショールーム」の役割を果たしている。来店客の約3割がECサイトでメガネを購入しているという。店舗売り上げの約2割に達している。「店舗と本部で折半すれば、店舗にとっては粗利1割増になる」(清川社長)と言う。
地方のメガネ店の運営支援も
オーマイグラスはECサイトを通じて集めたデータを活用して、地方にあるメガネ店の品揃えのアドバイスもしている。さらに、オーマイグラスが扱うブランド物や同社のPB(プライベートブランド)商品を卸している。同社は現在、約400ブランド、2万3000種類以上のメガネを扱っている。利益率の高いPBの比率は2~3割で、今後はその比率を高めようとしている。
「メガネ店の多くは何を仕入れたらいいのか、分からなくなっている。地方の店では資金繰りが厳しい状況になっており、我々の豊富なデータを活用して商品の品揃えや調達に関してお手伝いしている」と清川社長は語る。
ECサイトも本格展開するような大手メガネチェーン店を除くと、地方を中心に経営に苦しむメガネ店は多い。家族経営が多く生活に困っているケースもあるという。データに裏付けされたオーマイグラスのマーチャンダイジング力によって経営改善が進めば、厳しい資金繰りから脱することができるかもしれない。オーマイグラスとしても全国のメガネ店を支援していくことで、同社が扱う商品の売り上げを伸ばすことになる
オーマイグラスは昨年8月、産業革新機構などを引受先とする 総額約11億円の第三者割当増資を実施。新規株式公開(IPO)に向けて準備にも入った。データ活用を軸に、ECとリアル店舗の連携、自社と他メガネチェーンや地方の店舗との連携を進め、さらなる成長を目指す。