日経ビッグデータは2月20日、富士ソフト アキバプラザ(東京都千代田区)において、本誌読者限定の無料セミナー「ビッグデータが開く近未来 ~2020年への展望~」を開催した。報告記事の第2弾では、アクサ生命と神奈川県が描く健康・医療データの近未来の活用法をまとめる。

アクサ生命保険取締役専務執行役兼チーフマーケティングオフィサーの松田貴夫氏
アクサ生命保険取締役専務執行役兼チーフマーケティングオフィサーの松田貴夫氏

 「ビッグデータ活用で、保険のあり方は根本的に変わる」と力説するのは、アクサ生命保険専務執行役兼チーフマーケティングオフィサーの松田貴夫取締役である。同氏は、「ビッグデータ時代に必要とされる生命保険とは?」と題し、ビッグデータの活用で保険会社のビジネスモデルがどのように変化するのかを展望した。

 「保険料はリスクに応じて算出されるものだが、実際は年齢と性別で保険料を決めている。しかし、今後はビッグデータ活用で、個人が悪疫に罹患するリスクを自分で予測できるようになる。その時に、現状の保険商品でお客様は納得するだろうか。答えは『No』だ」(松田氏)

 例えば、女優のアンジェリーナ・ジョリー氏は、遺伝子診断キットで癌に罹患する確率を知り、予防的治療として乳房を切除した。今まで保険会社はリスク分析の専門家として必要とされてきたが、それが覆される。「今後は性別と年齢が同じであっても、罹患率予測で、保険料は異なるようになる」というのが松田氏の見解だ。

 今後のビッグデータを活用した商品/サービス開発として松田氏は、「厳密なリスク計算によるダイナミックな保険料の提案」と「疾病管理」を挙げる。特に保険料の提案では、契約者の健康に関するデータを保険会社と連携させることで、疾病リスクや死亡リスクが低下したと判断できれば、契約中でも保険料を下げられる商品の提案が可能になるという。すでにフランス本社では、腕時計型アクティビティ・トラッカーのWithingsを契約者に配布し、一定の運動を行うことで保険料を割り引くサービスを開始している。

 松田氏は、「ビッグデータの活用で加入者の状況を知り、個々に適切なアドバイスができるようになった。保険会社の使命は、加入者が健康で生活できるよう支援すること。(ビッグデータの活用で)その新たな仕組みを提供していきたい」と語った。

神奈川県、CHOと「マイカルテ」で健康増進

 超高齢社会への取り組みは、すべての自治体にとって最重要課題である。神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア医療政策担当理事の首藤健治氏は、「神奈川県のヘルスケアICT戦略」と題し、同県の取り組みを紹介した。

 神奈川県では2013年に「ヘルスケア・ニューフロンティア」プロジェクトを発足させ、2つのアプローチで課題解決に取り組んでいる。

 1つは「未病を治す」アプローチだ。医食農同源や運動習慣の奨励などで、個人が自分の健康を管理し、病気にならないように心がける。もう1つが「最先端医療・最新技術追求」アプローチで、iPS細胞研究や生活支援ロボットの開発、「お薬手帳」の電子化プロジェクト「神奈川マイカルテ」などで県民の健康を支える。首藤氏は、「両者を融合することで、新たな市場・産業の創出を目指す」と説明する。

 神奈川県は国家戦略特区を取得し、「健康・未病産業」「最先端医療産業」「ロボット産業」の育成に取り組んでいる。中でも全国的に注目されているのが、健康・未病産業分野における「CHO(健康管理最高責任者)構想」だ。これは、企業などが組織内にCHOの職を設け、職員の健康増進と生産性向上を実現する取り組みである。また、新たな市場・産業の創出では、IoT(Internet of Things)で日常生活のデータを収集/分析し、未病の原因になる要因を可視化する取り組みを行っているという。

 首藤氏は、「ヘルスケアは時間軸で捉えることが重要だ。健康増進の取り組みは、将来的に価値をもたらす。神奈川マイカルテでは、新生児から成人までの健康・医療情報を集約し、ライフログ化する取り組みを今年度から実施する。これにより医療の効率化を図るとともに、未病への取り組みや個別医療の実現を図りたい」と、その将来を展望した。

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