JXTGエネルギーは、タンクローリーに新しい車載システムの導入を進めて、配送計画との誤差時間の短縮や誤配送ゼロを実現している。石油輸送に関わる車両約1万台の走行データなどを基に配送計画を立て、また、車載システムを通じた誤配送の警告機能を加えた。

JXTGエネルギーの石油製品を配送するタンクローリー
JXTGエネルギーの石油製品を配送するタンクローリー

 石油元売り最大手のJXTGエネルギーは2012年12月以降、ガソリンスタンド(GS)などへの石油製品(ガソリン・石油)の配送に協力している運送業者のタンクローリーに、新たな車載システムを順次導入してきた。使い勝手や品質が改善されており、同社製品を運搬するタンクローリーの半数に搭載が完了した。数にして1000台強という。2017年度の早い段階までに全車両に搭載する計画だ。

 切り替え以前は、配送計画より20~30%も配送時間が狂うことがあったが、今回の車載システムになって±5%で、ほぼ計画通り配送できるようになったという。その理由について車載システムを開発した、パナソニックグループの光英システム(東京都新宿区)の葦津嘉雄社長はこう解説する。

 「以前はタンクローリーといった大型車両や危険物搬送車などの走行データを把握していなかった。そのために、無理な配送計画になっていた。いまは、石油輸送に関わる車両など約1万台(大型車両約3000台を含む)の走行データを活用して、2点間(輸送所とGSの間、GSとGSの間など)の距離・所要時間・滞在時間を記録した『知識データベース』に基づいて配送計画を立てている。知識データベースがない場合は、天候や曜日、時間帯などの条件ごとに算出した各地区(道路)の標準走行速度マップ『日本全国速度データベース』に基づいて配送計画を立てている。その結果として、±5%で計画通りに配送できるようになった」

 タンクローリーなどは、時速80km以内でしか高速道路を走れなかったり、普通の道路も乗用車のような速度で走れなかったりする。また、大型車両や危険物運搬車両などは走行できない道があり制約条件が多いのだ。

ドライバーに負担をかけない

 今回の車載システムでは、ドライバーが渋滞情報を見ることはできない。渋滞情報は運送会社の運行管理者が見ている。例えば、高速道路が渋滞している場合に、どこのインターチェンジで下りたらいいか、どの道を走ったらいいか、運行管理者がドライバーの端末に指示のメッセージを送る。

 「走ることができる道が限定されているので、あえて走行中のドライバーが判断できないようにして、負担を軽くしている。ドライバーには運転に集中してもらっている」(葦津社長)と言う。

 車載端末を積んでいるタンクローリーの現在位置や速度、燃費、危険運転の情報(急ブレーキ・急加速など)のデータを1分おきに測定している。危険情報の場合は瞬時に記録・通知している。全国に約11万あるGSなど石油製品の届け先情報を基に、タンクローリーが向かっている場所が合っているのか、間違っているのかシステムが把握してくれる仕組みになっている。さらに、目的地までの距離と地区ごとの標準走行速度データなどから、あとどのくらいで到着できるかリアルタイムで計算してくれる。間に合わない場合は、運行管理者から「遅れる」とガソリンスタンドに連絡する。

 また、デジタルタコグラフの速度波形から読み解いて速度超過なども記録しており、ドライバーが何時何分どこで急減速・急加速したのかを記録している。どの程度悪い運転をしたのか判定。日報には、運転の良しあしを示すレーダーチャートを載せる。

 「今はやっていないが、将来的には居眠り運転をしているかどうか、判定したいと考えている。レーンを逸脱したり、必要のない場所で減速していたりする場合など、居眠り運転の可能性がある。もし居眠り運転かどうか判定できれば、その時点で運行管理者とドライバーに連絡して、クルマを停車させるようにしたい」と、葦津社長は今後の展望を語る。

 今でも、ドライバーが危険運転をしている場合に、ドライバーと運行管理者にアラームが出る仕組みになっている。ドライバーには車両に備え付けているブザーを鳴らし、運行管理者の事務所では赤色や黄色のパトライトが点滅する。

ビッグデータ活用による危険情報の自動警告(画面)。運送会社の運行管理者が見ているパソコンの画面。稼働車両のリアルタイム安全管理を実現している
ビッグデータ活用による危険情報の自動警告(画面)。運送会社の運行管理者が見ているパソコンの画面。稼働車両のリアルタイム安全管理を実現している

 全社導入が完了する2~3年後には、「いまの道路状態を踏まえて最適ルートを探すシミュレーションができるようになる」(JXTGエネルギー販売部配送企画グループの渋井拓也シニアスタッフ)と言う。より有効なデータが増えることで、災害時における運行管理なども改善する。

間違いかどうか、教えてくれる

 JXTGエネルギーにとって、新車載システムによる最大の改善が「誤配送がゼロになった」(販売部配送企画グループの下村英樹担当マネージャー)ことだ。

 「この車載システム導入の大きな目的は安全輸送。物を運ぶ際の事故を少なくすることだった。結果として誤配送がゼロになった」(下村担当マネージャー)と言う。

 この車載システムは、タンクローリーが目的とするGSなどに着いた段階で、配送先が正しいかどうかドライバーはもちろん、運送会社の運行管理者に教えてくれる。運転席のタブレットや運送管理者のパソコン画面に表示される。もし間違ったGSのタンクに給油した場合は、それを抜き取り、再び利用できるようにするまでかなりの時間がかかる。基本的なことではあるが、誤配送を防ぐ仕組みは重宝されるわけだ。

誤配送を警告する車載端末の画面
誤配送を警告する車載端末の画面

 JXTGは、4つの元売りが一緒になったという経緯がある。同じインターチェンジの付近に、同じJXの看板があるGSが4つ存在することもある。システムは4つの中で行くべきスタンドを正確に把握しているので、誤配送が無くなったのだ。市販のカーナビと一体になっており、土地勘のないドライバーにとっては頼りになる存在だ。

 「冬場など、雪道で前が見えないなかでタンクローリーを走らせる場合に方向を見失うケースもある。目的に向かって進んでいるのかが運行管理者とドライバーの双方で確認できる。『見ていてくれたほうが安心だね』というドライバーの声もよく聞く」と、渋井シニアスタッフは話す。

 JXTGエネルギーの石油製品などを配送している平沢運輸(川崎市幸区)は、この車載システムを活用している。同社取締役執行役員の関敏明・総務部長は「導入に際してはドライバー全員に乗務員研修会を開いた。一昨年にはドライバーに意見を聞いたが、『以前の車載システムに比べて使い勝手がよくストレスがない』との声が多かった。運行状況をリアルタイム監視できるので抑止力になっている」と話す。

 ちなみに平沢運輸は独自でタンクローリーを約200台所有している。主な取引先はJXTGのほか、コスモ石油などがある。

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