コマツは2016年までに総額200億円をかけ、世界18拠点にある補給部品の供給体制の効率化を進める。作業要員や出荷に伴う時間を半分以下にする一方で、補給部品の需要を予測して在庫の最適化を進める。

 昨年8月に小山工場(栃木県小山市)内に約34億円を投じて設立した「新関東補給センタ」は、それまで工場内およびその周辺など5カ所に分散していた補給部品の倉庫を1カ所に集約。建屋の面積は従来の半分である2万2000平方メートルに削減し、作業要員とフォークリフトの数もそれぞれ半減させた。高さ9mの高層ラック(棚)を採用して、スペースの有効活用を図っている。さらに、棚の配置を最適化することなどによって、補給部品の動線距離を約8割削減することを目指しているという。

高さ9mの高層ラック(棚)を採用することでスペースの有効活用を図った最新鋭の倉庫 Photo by HIROYUKI Yamashita
高さ9mの高層ラック(棚)を採用することでスペースの有効活用を図った最新鋭の倉庫 Photo by HIROYUKI Yamashita
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 今回、補給部品の進ちょく状況をリアルタイムで把握できる「新WMS(補給部品倉庫管理システム)」を導入した。この「見える化」ツールを活用した様々な改善活動によって、海外へ出荷する場合、補給部品の補給センターへの入庫から船積みまでのリードタイムを約12日から4日に短縮する。センタと新WMSシステムへの約34億円の投資効果は、主にコスト削減を中心に年間換算で約10億円になるという。

部品の進ちょく状況を把握

 新WMSの導入による一番大きな改善点は、作業の進ちょく状況や実績の管理がリアルタイムにできるようになったことだ。その結果、正確な出庫管理が実現し、トラックの待機時間の短縮につながり、積み残しもなくなったという。今後、改善を継続してさらに短縮を図っていく。

タブレット端末に表示された作業指示を見ながら、グローブ型のバーコード読み取り機を使って、出庫の検品を行っている作業員 Photo by HIROYUKI Yamashita
タブレット端末に表示された作業指示を見ながら、グローブ型のバーコード読み取り機を使って、出庫の検品を行っている作業員 Photo by HIROYUKI Yamashita
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 リアルタイム管理のために、作業者が手にはめて使うグローブ型のバーコード読み取り機やタブレットなどを導入し、補給部品の入出庫伝票の発券といった手作業を廃止した。タブレット画面の指示はトラックの出発時間に合わせて、どの補給部品を優先して扱えばいいかを自動的に示すものだ。

 センタでは、補給部品の入荷、商品化個装(梱包)、入庫(倉庫に入れて保管すること)、出庫(出荷のために倉庫から出すこと)、梱包(いくつかの補給部品をまとめてパッケージ化すること)、出荷といった各工程に数人ずつの作業員が詰めている。

 各工程の管理者は進ちょく状況をグラフで見て、作業が遅れていないのかどうか確認している。受注に対して、引当やピック(出庫)、梱包の作業が十分に対応しているかどうか、各グラフの傾きを見て判断している。

補給部品の受注、引当、ピック、梱包の進ちょく状況を見える化<br>※実線が当日の数字、点線が前日の数字を示す
補給部品の受注、引当、ピック、梱包の進ちょく状況を見える化
※実線が当日の数字、点線が前日の数字を示す

 グラフの傾きが寝てくるなど作業が遅れているようであれば、作業員を追加するといった処置を取る。トラックの出発時間はたいてい夕方の6時ごろになっているので、午後1時以降になると、管理者は30分ごとに工程進ちょくのグラフを見て確認しているという。

 原則として、その日の午後5時までに受注した補給部品は出荷まで対応する。国内向けの補給部品は平均して1日5000件弱、海外向けは4000件弱扱っている。

 コマツ執行役員の信原正樹・生産本部小山工場長は、新関東補給センタの設立と新WMS導入の狙いについてこう語る。

 「新WMSの導入によって、補給部品の進ちょく状況をリアルタイムで見えるようにしたことは、効率化を進めるうえでとてもインパクトがある。そもそも見えないことには、アクションを起こせない。見える化できれば、最適な手を打つことができる。新関東補給センタの取り組みを横展開して、営業利益率が建設機械よりも高い補給部品の効率化をグローバルで進める。その結果として、コマツが目標とする2015年末で営業利益率18%以上の達成に貢献したい」

 世界18拠点にある補給部品の供給場所の効率化を進めるコマツだが、以前は生産した補給部品を倉庫に納めるだけだった。その後は、コマツの子会社が補給部品をトラックに積んで国内外の拠点に輸送していた。「昔は、(必要なタイミングで)部品が届かないという問題があった。部品を作る人間が補給センタのオペレーションに関与することによって、これまでの問題にメスを入れて効率化することになった」(信原工場長)と言う。

補給部品の需要を予測へ

 今年6月には、小山工場内に建設中の開発棟に、「部品販生オペレーションセンタ」が完成する。これは、同社の大阪工場(大阪府枚方市)内にある建設機械のグローバル販生オペレーションセンタの補給部品版となる。約10万アイテムある補給部品の需要を予測して、流通在庫の最適化を目指す。

 ちなみに大阪工場のグローバル販生オペレーションセンタでは、機械稼働管理システム「KOMTRAX」を通じて集まる世界の三十数万台の建機の稼働状況、流通在庫や日々の販売量など様々なチャートが映し出される。コマツでは、これらデータの分析結果などを判断材料として、経営陣が生産台数の増減を決めている。

 「今後、補給部品に対する需要は急増する。最適な時期に部品を交換することによって、顧客のライフサイクルコスト(LCC)を削減したい」と、信原工場長は期待を込める。コマツの純正部品を使っていた方が模造品を使うより、LCCが削減されるのであれば、顧客も純正部品を採用することになるはずだからだ。

 エンジンの場合は、純正部品のカバー率は100%に近い。ところが、フィルターなど小さな部品の場合は、模造品が使われるケースがあるという。

 世界各地にある補給部品の倉庫はこれまで、在庫を多く持ち過ぎる傾向にあった。顧客からオーダーが入ったら、すぐに補給部品を持っていき、機会損失を出さないようにしていた。早く補給部品を持っていけば、顧客に喜ばれるからだ。

 しかし、これからは様々なデータを活用して補給部品の需要を予測することにより、在庫の適正化を図っていくことになる。機会損失を起こさないようにしながら過剰な在庫を持たないようにする。そのためにも、世界18拠点にある補給部品センタのリアルタイム管理と効率化は必須というわけだ。