パーク24のカーシェアリング事業に代表されるデジタルビジネスはどのように進化していくのだろうか。ヒト、モノ、コト(ビジネス)がすべてデジタル化され、リアルタイムにデータをやり取りできるデジタルビジネスでは、これまで思いつかなかったような、無理だと思われていたようなビジネスモデルが実現できる可能性がある。

 施策を打ち立てて実行するにはやはり一定のデータ量、つまり会員数が必要となる。

 パーク24のカーシェアリング事業の場合、会員数が20万人を超えたあたりからサービスとしての定着が見えてきて、採算ベースに乗るためのKPIの達成が目指せるようになったという。

100万人超えるとデータに価値

 さらに会員数が100万人を超えると「収集しているデータそのものに価値が生まれてくる」と、内津事業部長は明かす。

 例えば、20代や30代といった若い男性がどんな車種、どんな色に興味を持っているのか、カーシェアリングのデータから把握できるようになる。会員は毎月約1%が退会しているが、そのうちの約2割はクルマを購入している。パーク24ではどんなクルマを購入しているかを実際に聞いてデータベース化している。

 若者のクルマ離れに悩む自動車メーカーにとっては、喉から手が出るほど欲しいデータと言えるだろう。実際、会員の内訳を見ると、20代以下が20%、30代が32%、40代が28%、50代以上が20%だ(2014年10月末)。年代別人口構成比を考えると、若い世代の構成比が多い。

 既に一部で実施されているが、新車のテストマーケティングとして、カーシェアリングを活用することも増えていくと見られている。どんなプロファイルの人がそのクルマを選択してどのように使うのか、リアルタイムで把握できるからだ。

 新規事業であるカーシェアリングのビジネスを軌道に乗せるために収集したデータから、さらに新たなビジネスが生み出される可能性が十分にある。

事故発生直後から支援する“秘書”

 今後、パーク24のカーシェアリング事業に代表されるデジタルビジネスはどのように進化していくのだろうか。

 これには米調査会社のガートナーが2014年6月に発表した、「自動車事故の際のシナリオ」という未来のサービス像がヒントになる。

 2台のクルマが衝突するという自動車事故が起こったと仮定しよう。その状況からの問題解決をドライバーの私設秘書が支援するのである。私設秘書と言っても、クラウドサービス上にあるバーチャル・パーソナル・アシスタント(VPA)である。

自動車事故の際のシナリオ
自動車事故の際のシナリオ

 VPAはクルマの中にあるスマホのセンサーから急減速したことをキャッチして、その他の情報と総合して事故と判断。VPAは、ドライバーの衣類に埋め込まれているセンサーから生体データを確認し、ドライバーの状態を把握する。

 そのバイタルデータを救命救急の第一応答者に送信して、救急車が到着してすぐに治療ができるように準備してもらう。近親者には、テキストメッセージとFacebookのメッセージなどを経由して事故の状況を知らせる。

 さらに、VPAは損害報告のため車両システムから損害状況のデータを収集する。消防署や警察署、レッカー業者、保険会社といった関係者に、損害報告を送信する。修理については、複数の会社から見積書が送られてくる。周囲にある監視カメラから衝突時の状況が分かる記録データも回収しておく。

 こうした一連のやり取りがVPAによって瞬時に行われる。ヒトやクルマなどの状態がすべてデジタル化され、通信で繋がっているからこそできる業だ。デジタルビジネスの時代には、こうしたサービスが当たり前になるだろう。

 もちろんこうした取り組みを実現するためには、テクノロジーの開発や制度面の整備といったことも欠かせない。

上記の事故対応の実現に必要なテクノロジーや取り組み
上記の事故対応の実現に必要なテクノロジーや取り組み

 医療機関や緊急機関がVPAのような電子的なエージェントからの通報に対応する必要もある。誤報やセキュリティ問題などにも対処すべきだろう。監視カメラから情報を集めるにしてもプライバシーの問題も横たわる。

 例えば、ドライバーの体から生体情報を取得する衣料素材の開発が求められる。実際、東レとNTTグループがそうした機能を持つ素材「hitoe」を開発しており、2014年12月にトレーニング用途での提供が始まった。Tシャツとトランスミッターのセットで2万520円。まずは製品の低価格化が課題となる。

デジタルで事業モデルを変革する

 パーク24の手掛けるカーシェアリング事業は、クルマを借りるという点では、一般的なレンタカー事業と同じ「リアル」なビジネスに見える。しかし、すべてをデータでリアルタイムにつなげている点で、デジタルビジネスの典型事例であるとも言える。

 ヒト、モノ、コト(ビジネス)がすべてデジタル化され、リアルタイムにデータをやり取りできるデジタルビジネスでは、これまで思いつかなかったような、無理だと思われていたようなビジネスモデルが実現できる可能性がある。

デジタルビジネスに商機を見いだす海外企業

 海外では、欧米を中心に様々なデジタルビジネスが誕生している。あらゆる事象がデジタル化されることでデータをリアルタイムでやりとりできるようになり、そのデータを生かしたこれまでにないサービスだ。

 米ガートナーによれば、デジタルビジネスの中で市場規模が最も大きいIoT(Internet of Things)関連だけでも、2020年に1兆9000億ドルの経済価値を生み出すとみている。

 例えば、海外のカーシェアリングサービスには、日本よりも発展しているものがある。独ダイムラーAGの100%子会社である独カーツーゴー(Car2Go)は現在、欧州や北米の29都市で展開。約90万人の会員と1万2000台以上の車両を運用している。タイムズカープラスと同様、スマホなどで予約やキャンセル、カギの施錠が簡単にできる。

 さらに、日本と違ってクルマを乗り捨てることができるため、タクシー代わりにカーシェアリングを使うケースが多いという。既に「タクシーよりも安く、レンタカーよりも使い易い」という評判を得ている。

 仏ミシュランの新事業であるミシュラン・ソリューションズは2013年、運送会社向けに燃料消費の削減方法をアドバイスすることによって、走行距離100km当たり最大2.5リッターの節約を可能にしたという。このサービスを提供するために、ミシュランはトラックのエンジンとタイヤにセンサーを装着し、燃料消費量やタイヤの空気圧や気温、スピード、ロケーションなどのデータを収集。クラウドサービスに転送して、ミシュランの専門家が分析を行って、運送会社にアドバイスを提供している。

 デジタルビジネスの潜在力に対する期待は大きい。アクセンチュアデジタルコンサルティング本部の立花良範マネジング・ディレクターは「機器に埋め込まれたセンサーで収集されるデータによって、新しいビジネスが起こっている。機器を作っていない企業が、付加価値の高いサービスを提供できる」と指摘する。

 機器を作っている会社でなくとも、新たに生まれるビッグデータを活用することで、これまでにないビジネスモデルを構築できるチャンスだ。

デジタルビジネスの事例
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