パーク24のカーシェアリング事業の会員の顧客満足度を高めてサービスの定着を図りながら、事業の黒字化を達成する。緻密な改善が必要とされ、そのために有効だったのはKPIのリアルタイム把握だった。

 KPIは値の評価によって、上げた方がいい「アップ」、下げた方がいい「ダウン」、オペレーションを円滑にする「スムーズ」の3つに分類される。

カーシェアリング事業で重視しているKPI
カーシェアリング事業で重視しているKPI

 「アップ」のKPIには、クルマの稼働率(平日、休日、昼、夜などに分類)、エリア会員数、クルマの燃費などがある。

 稼働率は休日が圧倒的に高い。これは会員の約65%が個人会員であるからだ。平日に比べて休日の稼働率が高くなる。平日の稼働率を上げるためには、法人会員を増やす施策が必要だった。

 例えば、出張での利用を増やすために、新幹線の駅にステーションを設置していくなどの施策を実行してきた。東海道、山陽、東北、上越、九州の各新幹線、38駅の周辺に約145カ所のステーションを設置している(2014年8月18日現在)。配備しているクルマの数は合計311台である。

 2014年8月8日から2015年3月31日にかけては、伊丹空港(大阪国際空港)から関西国際空港までの区間に限って、「乗り捨て企画」を実施している。

 伊丹空港北ターミナル近くにある大阪国際空港ステーションと、タイムズカーレンタル関西空港店の双方での乗り捨てを可能にしたのだ。タクシーを使う場合と比べて約1万5000円安くなるというのが訴求ポイントだった。これも、法人会員を増やして平日の稼働率というKPIを上げるためだ。

法人顧客増でKPIのアップを実現

 こうした施策を実施することで、法人会員の数は順調に増えていった。

 2011年10月期の法人会員比率は25.5%。2012年10月期は31.2%、2013年10月期は34.5%、そして2014年10月期は35.5%と、毎年比率を増やしていき、平日の稼働率が改善していった。

 その結果、法人会員の平日利用金額は2014年10月期までの3年間、対前期比で24.3%増、39.0%増、25.4%増と順調に増加した。

 燃費のKPIは、ステーションに配備するクルマを燃費のいいハイブリッドカーに切り替えることで対応した。

 「鶏であるクルマを先に配備すれば、卵である会員さんは自然と増えていく。配備は止められない。稼働状況はリアルタイムで把握できるので、場所によっては増車して需要に対応してきた。人気のある車種や色なども把握できるので順次入れ替えていった」と内津基治・タイムズカープラス事業部長はきめ細かい対応ぶりについて話す。

金曜日にKPIをチェックし改善

 パーク24では毎週金曜日、内津事業部長をはじめカーシェアリング事業に携わる管理者約10人が会議を開き、それぞれのKPIを確認している。

 目標のKPIに達していない場合は、改善するための施策を翌週の月曜日までに考えて、実行する。毎週PDCA(計画・実行・評価・改善)を高速に回しているというわけだ。

 そうした中から生まれたのが、2014年4月にスタートした会員向けの優遇サービスである「TCPプログラム」である。

 TCPプログラムでは主として「ダウン」と「スムーズ」のKPIの改善を図っている。これらのKPIはクルマの運転者である顧客の理解や協力を得る必要があるものがほとんだ。

 ダウンは燃料費、修理費や保険料などの事故関連費用、コールセンターの運営費用などのコスト、事故件数、コールセンターへのコール数などである。「スムーズ」は、定期的な清掃といった車両メンテナンスの効率化の指標である。

 導入したきっかけの1つは「どうすればクルマをきれいに使っていただけるのか」といった課題だった。TCPプログラムでは、クルマをきれいに使うと、ポイントを付与する。きれいに使ったかどうかの評価は、次に乗る人が行う。

 具体的には「あなたの前に利用された方の返却状態」に関するウェブアンケートに答えると、1回につき1ポイントもらえる。高評価された会員には3ポイントが付与されるという具合だ。

 「日本人は人の目があると感じると、大事に、きれいに乗ってくれるもの。『顧客のお手伝いしたい気持ち』をうまくTCPプログラムに取り入れることで、きれいに使っていただけるようにした」(内津事業部長)。もちろんパーク24の係員がクルマをチェックするコストも省ける。

TCPプログラムの仕組み
TCPプログラムの仕組み

 クルマの稼働率低下や事後処理や修理のコストにつながる事故について、発生率の引き下げにも活用する。急加速や急減速をしない安全運転をした場合、それぞれ3ポイントずつ付与する。3秒間で時速25km以上上がった場合を急加速、3秒間で時速30km以上落とした場合を急減速と判定する。

 ガソリン代は料金に含まれており、レンタカーのように給油する義務はない。ただし、20リッター以上の給油を行うと3ポイントが付与される。こうした給油の精算は、クルマに備え付けの時間限定のクレジットカードを使う。給油を行った場合は15分の利用がサービスされる。

 これらの判定はクルマのデータをリアルタイムに自動収集しているので可能となる。以前は給油した場合にコールセンターに電話を入れる仕組みだったが、給油を自動検知する仕組みに切り換えてコール数(コスト)を減らした。

 一方でポイントを減らされる場合もある。

 例えば、返却予定時間に間に合わず、車両の振り替えなど次の利用者に迷惑をかけた場合だ。50ポイントのマイナスになる。無断で延長した場合も1回当たり5ポイントのマイナスになる。さらに事故やゴミによる汚損などでクルマが利用できない状態になった場合は、100ポイントのマイナスだ。駐車違反も100ポイントのマイナスになる。

ポイントで急加速・急減速が減る

 顧客の協力を得てKPIを改善していくTCPプログラムには、3つのステージがある。

 過去13カ月の累積ポイントが100を超えるとステージ2に上がり、3週間前から予約、ステージアップ時に30分の利用チケットがもらえる、といった特典が与えられる。200ポイント以上はステージ3で、3週間前からの予約に加えて、パックの料金を1000円割り引いたり、外車などプレミアムクラスのクルマがベーシッククラスの料金で利用できる。

TCPプログラムの導入効果
TCPプログラムの導入効果

 TCPプログラムの導入によって目に見える効果も出ている。

 例えば、急加速・急減速が減った。急加速が0回だった利用はTCPプログラムの導入前(2014年3月)に46.7%だったが、導入後(2014年9月)は64.0%まで上昇した。急減速0回の比率は、導入前50.8%が、導入後は56.0%に増えた。

 会員にとって一定のインセンティブが働いているようだ。2014年10月末時点で、ステージ1の会員は個人会員全体の90.6%、ステージ2は同7.9%。ステージ3は同1.5%である。

 ここまでパーク24のカーシェアリング事業と黒字転換に至るまでの改善の取り組みについて見てきた。顧客満足度を向上させながら収益を追求する難しい舵取りができたのは、データに基づく高速KPI経営のなせる業だ。

 まさに、顧客の利用状況やクルマの状態がリアルタイムに把握できるからこそ、最適なKPIが見える化できる。事業者側ではどうすることもできない、顧客にインセンティブを持ってもらう改善施策を考えて実行に移すことができたわけだ。

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