パーク24グループのタイムズ24は、約5年間取り組んできた新規ビジネスのカーシェアリング事業で念願の黒字化を達成した。それを支えたのがリアルタイムのデータ活用による高速KPI経営だ。

1台当たり月の売り上げと費用
1台当たり月の売り上げと費用

 2014年12月16日、東京都千代田区有楽町の本社で開催されたパーク24の決算説明会。西川光一社長は「カーシェアリング事業は、クルマ1台当たり1カ月間の売上高9万9800円に対して同費用を9万9600円に抑えることができ、黒字の着地となった」と説明した。2014年10月期の同事業は、売上高が約103億9000万円、営業損益が前期の約6億7000万円の赤字から約1600万円の黒字に転じた。

 カーシェアリング事業は「タイムズカープラス」のサービス名称で、34都道府県に約1万台の車両(クルマ)を配備しており、会員数は約40万人まで拡大した(2014年10月末)。2015年10月期にはカーシェアリングの拠点である「ステーション」の数を前期比3割増の7400カ所まで増やし、配備するクルマも約1万3000台に引き上げて、顧客の利便性を増す計画だ。

 約1600万円とわずかではあるが、2009年10月期から約5年間取り組んできたカーシェアリング事業が黒字化したことの意義は小さくない。

 1つはパーク24にとって既存の駐車場インフラを多重活用する新規事業の収益化に道筋を付けたことだ。2つめが同社が進めてきたKPI(重要業績評価指標)経営を進化させ、その効果が実証されたということだ。

全駐車場を同じ指標で評価

 パーク24はTONIC(Times Online Network & Information Center、トニック)と呼ぶ独自システムで、事業に関連する様々なデータを管理している。(1)1日約150万入出庫の駐車場利用データ、(2)約1万4000カ所の駐車場の経理データ、(3)約1万台のGPS(全地球測位システム)や走行データ、約3万6000台の車種や車両利用データ、予約データ、(4)513万の会員データ──といったものである。

 例えば、駐車場ごとの損益計算書を月初に算出するのに活用している。係員による現地の集金結果だと、集金のタイミングが異なり比較において正確なデータにならないことを解消したものだ。同一の指標でリアルタイムに把握し、問題の予兆をいち早く察知する。カーシェアリング事業では、エリアや会員の属性で、好まれる車種や色を分析し、稼働が低い車両を入れ替えている。

 今回達成したカーシェアリング事業の黒字化は、こうしたKPI経営を進化させた成果である。このことは意外に知られていないが、デジタルテクノロジーの発展を事業にうまく取り込んで、高速KPI経営を実現したのだ。

 カーシェアリング用の車両には各種のセンサーや通信機能が搭載されており、位置や速度、ドアロックなど様々な状況を稼働中にリアルタイムで取得し把握できるようになった。あらゆるデジタル機器が相互に通信し合うテクノロジーの革新をうまくビジネスに融合させたのが、カーシェアリング事業と言えるだろう。目標とするKPIを達成したかどうかがすぐに分かるので、改善に素早く動けるというわけだ。

 高速KPI経営の詳細を紹介する前に、カーシェアリング事業のサービスについて簡単に説明しておこう。

24時間・15分単位で利用可能

パーク24のカーシェアリング事業「タイムズカープラス」のステーション。予約後数分でクルマを借りることができる
パーク24のカーシェアリング事業「タイムズカープラス」のステーション。予約後数分でクルマを借りることができる

 タイムズカープラスは24時間、予約した数分後からすぐにクルマを使える利便性がウリである。目指すは「モビリティサービスのコンビニエンスストア」(内津基治・タイムズカープラス事業部長)で、いつでもどこでもクルマを手軽に使える世界の実現を掲げている。

 料金体系は月額基本料金+時間課金である。月額基本料金は1030円(学生と法人会員は不要)。時間課金は主に国産車になるベーシックの場合で、15分当たり206円である。仮に1時間予約しても、30分以内の使用であれば、使った分だけの412円で済む。料金にはガソリン代や自動車保険料も含まれている。

 会員になるのは簡単だ。無人の入会機を使えば、約10分で会員カードを手にすることができる。備え付けのカメラを通して、本人と免許証の写真が同一人物であることを、遠隔地にあるセンターの担当者が確認するという仕組みだ。

 会員になれば、パソコンやスマートフォン(スマホ)などで簡単に予約できる。住所や近くの駅名などによって最寄りのステーションを検索して車種を選び、利用したい時間と返却時間を入力するだけでいい。

 利用する際には指定したクルマの車体後部にある「TOUCH」と書かれたセンサー部分に会員カードをかざすとドアのカギが解錠される。予約時に目的地を設定しておけば、その情報がカーナビに反映されている。予約の変更やキャンセルも、予約時間の1分前まで可能で、急な予定変更にも柔軟に対応してもらえる。

カーナビの画面から利用延長などの指示ができる
カーナビの画面から利用延長などの指示ができる

 タイムズカープラスが黒字化できたのは、西川社長が決算会見で説明したように、クルマ1台当たりの売り上げに対して、経費をそれ以下に抑えた結果である。

 グラフから、1台当たりの売り上げを伸ばす一方で、費用をフラットにしているのが分かる。1台当たりの会員数を増やすことなどで、費用に見合うように売り上げを増やす必要がある。内津事業部長は「現在、クルマ1台当たりの会員数は41.5人」と話す。

 一方でクルマを増やさないことで1台当たりの会員数を増やしていくこともできるが、「会員が使いたい時間にクルマがなかったり、乗りたい車種がなかったりして利便性を損ない、顧客満足度を低下させてしまう」(内津事業部長)。